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最大損失額を決めた状態状態でFXのトレードができる商品
ノックアウト・オプションとは、その名前の通りオプション取引の一種です。オプション取引に関する正しい理解は必要ですが、専門用語を使わなくてもそのメリットを生かしたトレードをすることはできます。まずここでは、あえて専門的な用語をできるだけ使えわず、ノックアウト・オプションの基本的な概念に絞り込んで解説します。
ノックアウト・レベル(=損切り幅)を決める
ノックアウト・オプションで取引をするためには、ノックアウト・レベルを決めます。これは最大損失の金額(損切りされる値幅)と覚えましょう。
例えば、ドル円が上昇すると予想した場合は「ブル」の買い注文を入れます。現在の価格が100円、99円50銭で損切り(ノックアウト)になる場合、ノックアウト・レベルは50銭となります。99円で損切りするなら、ノックアウト・レベルは100銭となります。
ノックアウト・レベル(最大損失の金額)+ノックアウト・プレミアム程度でポジションが持てる
損切り幅がすでに決まっていますから、それに取引ロット数(通貨)を掛けると、そのトレードが失敗した場合の損失金額が確定します。ノックアウト・レベルが50銭なら、10,000通貨(1ロット)取引で損失は5,000円です。100,000通貨(10ロット)取引なら50,000円です。
ノックアウト・レベル(最大損失の金額)+ノックアウト・プレミアム程度でポジションが持てる
ここが一番重要なところ。ノックアウト・オプションでは、ノックアウト・レベル(損切り幅)がオプション購入金額となり、これが取引における最大損失の金額になります。
例えば1ドル=100円のときに、10,000通貨取引、ノックアウト・レベルが20銭の場合、2,200円の資金で10,000通貨を保有できます。
これがレバレッジ25倍のFX個人口座の場合、40,000円の証拠金が発生しますから、ノックアウト・オプションとFXの単純な資金効率差は約18倍。
このようにノックアウト・オプションは、ノックアウトレベルを設定するため、リスク管理しやすく、高い資金効率でトレードができる金融商品といえます。
日本国内で取り扱いがあるのはIG証券だけ
2019年12月時点で、ノックアウト・オプションの取引ができるのはIG証券のみです。IG証券はノックアウト・オプションの他、FX、株価指数CFD、商品、個別株CFDなどの取引が可能です。
ノックアウト・オプション(IG証券)のメリット
ノックアウト・オプションのメリットについて解説していきます。
高い資金効率でトレードができる
ノックアウト・オプションはオプションのひとつなのでFXとは仕組みが違う商品なのですが、FXに感覚的に似たイメージでトレードができます。
すでに述べたように、
- 1ドル=100円
- 10,000通貨取引
- ノックアウト・レベルが20銭
という条件の場合、ノックアウト・オプションなら2,200円の資金(オプション購入金額)でポジションを保有できます。
これがFX個人口座の場合、40,000円の証拠金(レバレッジ25倍の場合)が必要なので、ノックアウト・オプションはFXと比較して約18倍資金効率に違いがあることになります。
FXは損切り幅でレバレッジが変わりませんが、ノックアウト・オプションは損切り幅が狭いほど(ノックアウト・レベルが現在価格に近いほど)、必要資金が圧縮されるため、より資金効率が良くなります。逆にノックアウト・レベルが遠くにあるほど資金効率は悪くなります。
ノックアウト・オプションを活用することで、FX以上の資金効率で取引できます。為替レートの変動による基本的な利益、損失の金額はFXと変わらず、しっかりしたチャートの分析や相場の判断ができなければ、トレードで結果を出せないことはFXと変わりありません。むしろ、資金効率が良いノックアウト・オプションの方が良くも悪くもあっという間に損失が確定し資産を失うことになりかねません。
その一方、機械的に損切りが行われるのでFXのようにずるずると含み損を抱え続ける可能性が少ないとも言えます。
れっきとした国内証券会社
IG証券はロンドンに本拠地を置く「IGグループ」の外資系グローバル企業の日本法人です。もちろんIG証券は金融庁に届け出をしている日本法人ですので、日本国のルール内で運営されています。そのため、信託保全(顧客の預け入れ資産が、会社の運営資金と別に管理されていること)はもちろんですし、届け出をしていない海外業者でよく聞かれる入出金の不安もありません。
必ず事前に決めた価格で損切りされる
ノックアウト・オプションは、その商品の仕組み上、トレードをする前に必ずノックアウト・レベルという撤退ラインを決める必要があります。そのため、損切りが苦手な方でも、事前に損切りを入れる習慣が身につきます。
スリッページや窓空きの悪影響がない
事前にノックアウト・レベルが決まっており、ノックアウト・オプションは、スリッページが発生しないルールになっているので、スリッページによって事前に決めた価格と大きく乖離した水準で約定をさせられることがありません。
また、週初のスタート価格が前週の終値と大きく離れていたり(窓空き)、経済指標などの相場の急変で価格がワープするような値動きが起きても、ノックアウト・レベル以上に損失を負うことはありません。
取引できる銘柄が豊富
ノックアウト・オプションには、非常に多くの銘柄数があります。FX銘柄はメジャーなものからマイナーなものまで約100種類、株価指数(日経平均、NYダウなど)が約40種類、商品(原油、金など)がラインナップされています。
デモ口座で練習できる
FXとはまた違う仕組みなので、初めて取り組む場合には操作に慣れる必要がありますが、デモ口座があるので練習が可能です。どういう形でポジションを持ち、ノックアウト・レベルを設定できるかを知った上で、実資金でトレードに移行しましょう。
スマホアプリでも取引できる

パソコンだけでなくアプリもリリースされているので、移動中でもエントリーやポジションの確認が可能です。
ノックアウト・オプションだけでなく、FXや個別株、CFDなどの取引も可能です。
ノックアウト・オプション(IG証券)のデメリット
次にデメリットを見ていきます。FXとは違う商品という意識で、確認してみてください。
新規エントリーは成行注文のみ
相場に入るタイミングはリアルタイムのみで、指値など価格を予約することはできません。よって、取引画面を見ながらの裁量トレードに限定されます。
なお、決済は利食い(指値)、ノックアウト・レベルに到達する前の損切り(逆指値)を予約できます。
ノックアウト・レベルは変更できない
一度決めたノックアウト・レベルは動かせません。これはつまり、その取引の最大リスクは変えられず、資金効率もそのままということになります。
ただし、逆指値価格は変更できるため、損切りされる価格を浅くすることはできます。ノックアウト・レベル以上に深くすることはできません。
実際にノックアウト・オプションをトレードしてみよう
ノックアウト・オプションの取引画面は、FXとはかなり違う部分があるので、実際にトレードをして覚えていきましょう。操作に慣れないうちは、デモ口座で練習すると良いでしょう。
ノックアウト・オプションの画面の見方

ノックアウト・オプションのトレード画面には、チャートと注文関係のパネルがひとまとめになっており、この画面だけで一通りのトレードができます。画面が大きくないノートパソコンでも問題ありません。
- 通貨ペア:現在トレードをしている通貨ペアが表示されます。ここではドル円です。
- 時間足:チャートの時間軸を表示します。ここでは5分足が選択されています。
- ブルとベア:ブル(上昇)とベア(下降)のレートが表示されています。2つのレートの価格差がスプレッドです。この画面ではスプレッドが0.6銭になっています。
- ノックアウトレベル、プレミアム:最終撤退ラインのノックアウト・レベルを一覧から選択します。

1ポイントが1pipsという表記で、109円30銭は10930となり、FXとは異なるので要注意。
- 購入ボタン:ノックアウト・レベルまでの値幅(11)とノックアウト・プレミアム(2)を足したポイント数(13)を支払って購入します。この場合は、1ロットあたり13ポイントを支払います。
- ロット数:FXの場合、1ロットが10,000通貨取引に相当します。
- 指値と逆指値:利益確定までの値幅ポイント(指値)と損切りまでの値幅ポイント(逆指値)を指定できます。
- 購入する水準とリスクリワードレシオ:この価格水準でエントリーされます。損切り幅(逆指値までの幅):利確幅(指値までの幅)の比率が表示されます。このトレードの場合、1:2.6で、損失1に対して利益はその2.6倍になっています。
- 指値の水準:この価格で指値決済(利益確定)します。
- 逆指値の水準:この価格逆指値決済(損切り)します。
- ノックアウトレベル:この価格でノックアウトになります。
- 利食い時の金額と値幅:指値到達時の勝ち額と値幅が表示されます。
- 損切り時の金額と値幅:逆指値到達時の負け額と値幅が表示されます。
- ノックアウトレベル到達時の損失額:ノックアウトまで行った場合の損失額です。
指値と逆指値の変更と即時決済

注文画面とは別の、保有ポジションのタブを開くと、現在持っているポジションが確認できます。また、この画面から指値と逆指値の値幅を変更できるほか、今すぐにそのポジションを決済することもできます。
1,000円ちょっとの資金(オプション購入金額)で10,000通貨取引

上記のポジション(ドル円の10,000通貨買い)を保有したときの口座画面です。1,270円の資金(オプション購入金額)で、10,000通貨取引ができている点に注目。ノックアウト・レベルまでの値幅程度でポジションが保有できることがお分かりいただけると思います。
ノックアウト・オプションにマッチした相場とは?
相場の転換を狭い値幅で狙える場面

上のチャートのように、この水準で相場が転換する可能性があるという局面では、思惑が外れた場合の損切りラインが明確なため、ノックアウト・オプションで狙いやすいといえます。損切りの幅をできるだけ狭くすることで、よりたくさんのポジションを持てるため、予想通り反転した際に大きな利益が狙えます。ただ予想通りに反転しなかった場合は損失になります。
強力に機能しているトレンドラインがある場面

斜めのトレンドラインであっても、完全に逆側に抜けてしまえば撤退と判断できるため、損切りの基準が明確であり、ノックアウト・オプションで狙いやすいと言えます。
的確なラインが引ければ、わずかな損切りの値幅(ノックアウト・レベル)で、強力なトレンドに乗れる可能性もあります。
注目されている経済指標など急激な値動きがある場面
ノックアウト・レベル以上の損失を被らないことが、ノックアウト・オプションの強みです。よって、瞬間的な値動きが予想される局面で、損失を想定内に抑えつつ、利益を狙う戦略が考えられます。
ただし、ノックアウト・レベルの最低幅(最低損切り幅)は、相場の展開によって変化するため、常に狙ったノックアウト・レベルでポジションを持つことができないかもしれません。
その他、ノックアウト・オプションのよくある質問
スプレッドはどれくらい?
ドル円が0.6銭、ユーロ円が1.1銭、ポンド円が2銭と、同じIG証券の通常のFX口座よりはやや広いスププレッドとなっています。
特に低スプレッドにこだわる超短期のスキャルピングをする方は、FX口座とのスプレッド差(ドル円なら0.2銭)も考慮して、取引をする商品を選択してください。
スワップポイントはもらえるの?
ノックアウト・オプションでも、通常のFX口座同様のスワップポイントが付与されます。
ポジションはずっと持てるの?
ポジションは保有してから最長1年以内に決済しなければいけません。デイトレードやスキャルピングといった短期トレードなら関係ありませんが、長期的にスワップポイントを狙ったり、年単位のリターンを狙うポジショントレードには向きません。
この記事の執筆者

FXライター
鹿内武蔵
略歴
国内唯一の月刊FX情報誌、FX攻略.comの元副編集長として、2008年の創刊時より取材・編集・執筆に携わる。 多くの勝ち組トレーダーや証券会社を取材してきた経験を活かし、FXが国民的投資になることを目標に活動中。各種メディアでの執筆の他、トレーダーとしてFXの運用も行っている。 →エフプロ執筆者・監修者一覧