目次
スプレッドとはFXの取引手数料のこと
スプレッドとは、買値と売値がいの差であり、取引にかかるコストです。
そもそもFX(外国為替取引)でのレートは2WAYプライス(ツーウェイプライス)という方法をとっています。
具体例でいうと、「(米)ドル円 100.000円 99.997円」という形で2つのレートが表示されるということです。
2つのレートはそれぞれ買値(かいね)と売値(うりね)と呼ばれています。
つまりドル円を買う時は、1ドル「100.000円」で買うことができ、売る時は1ドル「99.997円」で売ることができます。
このケースの場合、買値「100.000円」から売値「99.997円」を引いた0.003円(0.3銭)がスプレッドとなります。
つまり、ドル円を買って(100.000円)、レートが変わらないうちにすぐに売ると(99.997円)、0.3銭の損失が出ることになります。
これが、FX取引で一般的にかかる取引コストです。
スプレッドは、厳密にはスプレッド分がそのままFX会社の収益になるわけではないので、手数料ではありません。
しかし、投資家からすれば取引コストには変わりがないので、実質的に手数料のようなものと考えても問題ありません。
では、スプレッドについてさらに具体的に説明していきましょう。
その前に、FXの基礎を一度おさらいしたいという方は「FXとは?をわかりやすく|投資初心者が知るべき基礎知識」をご参考ください。
1分でわかる!FXの単位「pips」ってなに?
pipsとはポイントのことです。ピプス(またはピップス)と呼びます。
ドル円の場合は、1pips=1銭のことです。よって、1円は100pipsです。例えば、1ドル100.12円の場合、1pips上昇すると100.13円となります。
「30pips上昇した」ということは30銭上昇したことをいいます。他の通貨でも考え方は同様です。
それではなぜ、FXには「銭」や「pips」のような細かい単位が存在するのでしょうか。
それは、FXにおいて、100万円などの大きな金額で外貨取引をするときに、より細かな単位での交換を可能にするためです。
しかし、スプレッドが1銭(1pips)変わったところで、損益にそれほど違いがあるようには思えません。
スプレッドは実際の取引でどの程度影響してくるのかを、次章で解説します。
結局スプレッドって気にした方がいい?カギは取引スタイル
スプレッド分の取引コストはトレードスタイルによって総額の負担が異なります。
では、実際に取引した場合にはどのくらいのスプレッドがかかるのかについて、具体例を挙げて説明していきます。
例えばGMOクリック証券の場合、ドル円のスプレッドは原則固定で0.2銭です。※1
1万ドル分取引した場合、スプレッド分の0.2銭は1万倍の20円分となります。
※レバレッジ25倍で1ドル100円だと想定すると、4万円で購入できます。
つまり、現在提示されているレートが変わらない前提で、買ってすぐに売ったとすると30円損することとなり、それが取引コストとなります。
この場合、買ったレートから0.2銭分上昇してはじめて損益プラスマイナスゼロとなり、それ以上に上昇して初めて含み益となります。
分単位の超短期で頻繁に売買を繰り返すスキャルピングの場合、取引回数が多い分、多くの取引コストがかかることになります。
スプレッドはFX会社によって異なり、多くの取引回数を重ねていくと、1度の取引では0.1銭の違いでも、長期的には積もっていくためパフォーマンスに影響します。
一方で、スイングトレードや長期トレードの場合は取引回数が少ないので、0.2銭の取引コストはほとんど気にならないレベルとなります。
スプレッドという観点からは、なるべく取引をする通貨のスプレッドが低いFX会社で口座を開設するのが望ましいです。
※1 2023年11月時点
【通貨ペア別】FX会社12社のスプレッド比較
FX会社 | 米ドル/円 | ユーロ/円 | ポンド/円 | 豪ドル/円 | NZドル/円 | ランド/円 | 詳細 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0.2銭 | 0.5銭 | 1.0銭 | 0.6銭 | 0.8銭 | 1.0銭 | 詳細 | |
*2 | 0.18銭~ | 0.38銭~ | 0.88銭~ | 0.48銭~ | 0.68銭~ | 0.88銭~ | 詳細 |
0.2銭 | 0.4銭 | 0.9銭 | 0.5銭 | 0.7銭 | 0.9銭 | 詳細 | |
0.2銭 | 0.4銭 | 0.9銭 | 0.5銭 | 1.2銭 | 1.0銭 | 詳細 | |
0.2銭 | 0.5銭 | 1.0銭 | 0.7銭 | 0.8銭 | 1.0銭 | 詳細 | |
0.2~3.8銭 | 0.4~5.9銭 | 0.9~9.9銭 | 0.5~5.8銭 | 0.7~7.9銭 | 0.5銭 | 詳細 | |
*1 | 0.2銭 | 0.4銭 | 0.9銭 | 0.5銭 | 0.7銭 | 0.3銭 | 詳細 |
1銭 | 2銭 | 4銭 | 3銭 | 6銭 | 15銭 | 詳細 | |
0.3銭 | 0.5銭 | 1.0銭 | 0.6銭 | 1.7銭 | 1.8銭 | 詳細 | |
0.3銭 | 0.4銭 | 0.7銭 | 0.5銭 | 1.2銭 | 0.8銭 | 詳細 | |
0.1銭*3 | 原則固定停止中 | 原則固定停止中 | 原則固定停止中 | 原則固定停止中 | 原則固定停止中 | 詳細 | |
※ | 0.5銭 | ※ | 0.7銭 | 1.1銭 | 1.0銭 | 詳細 |
<備考>
※2023年11月時点
※スプレッドは全て原則固定(例外あり)
※太文字は各項目の最小値(通貨ペア数のみ最大値)
*1 原則固定※例外あり/キャンペーンスプレッドを含む。詳細は公式HPをご確認ください。
*2 1〜1,000通貨で適用。1,001〜1,000,000通貨では0.19銭。
*3 1shot 50万ドル以下の場合
別記事の【2021年最新版】FX口座の手数料・スプレッドを比較|取引コストが安い会社はどこ?ではFX会社12社のスプレッド比較表に加えて、「低コストの会社を選ぶポイント」や「FX経験者が選んだ【低コスト会社】ランキング」について紹介しています。
実際にスプレッド別でFX会社を比較してみたい方は参考にしてください。
初心者は要注意!変動スプレッドと原則固定スプレッド
初心者に向いているのは原則固定スプレッド
多くのFX会社は「原則固定スプレッド」を謳っています。「原則固定スプレッド」とは、その名の通り、原則としてスプレッドが固定でいくらと決められているということです。
しかし、あくまで「原則」であるため、時間帯や経済指標の発表時には広がることもあります。
例えば、GMOクリック証券でのスプレッドは原則固定で主要通貨ペアのスプレッドは以下のようになっています。
通貨ペア | スプレッド |
---|---|
ドル/円(USD/JPY) | 0.2銭 |
ユーロ/円(EUR/JPY) | 0.4銭 |
ポンド/円(GBP/JPY) | 0.9銭 |
豪ドル/円(AUD/JPY) | 0.5銭 |
※2023年11月時点
(※2022/1時点)
スプレッドが常に変動する「変動制スプレッド」
一方、常にスプレッドが一定ではない「変動制スプレッド」を採用しているFX会社もあります。
ちなみに、FX会社のカバー先の銀行なども変動制スプレッドであり、為替のプロのマーケットでは変動制が一般的です。
ただし、変動制は必ずしも原則固定より不利ということではありません。
変動制スプレッドでは、チョイスという買値と売値が同じレートになる現象が起こることもあるので、この現象が起こっている時はスプレッドが引かれることなく取引することができます。
他にも変動制スプレッドは、原則固定スプレッドよりもさらにナロー(狭い)スプレッドを提供できる場合もあり、マーケットに応じてスプレッドが変わっても良い方にはチェックしてほしいポイントです。
ただ、ほとんどの会社は「原則固定スプレッド」を採用しているので、変動制スプレッドで取引できる会社は多くありません。
スプレッドの広さはFX会社で違う
スプレッドはどこのFX会社でも同じではありません。
同じ味のトマトを100円で売ってるところもあれば300円で売っているところがあるのと同様に、ドル円などの通貨ペアのスプレッドにおいても、スプレッドの値には差があります。
FX会社同士では、顧客を獲得するために、スプレッドの狭さを競って熾烈な争いが起こっています。現在、狭いスプレッドといわれているのはドル円でいうと0.3銭や0.2銭です。
【注意】変動制スプレッドが広がる2つのタイミング例
上述したように、原則固定スプレッドでもスプレッドが変動することがあります。
よくスプレッドが広がりやすいタイミングは、早朝と経済イベントが発生したときが挙げられます。
①早朝にスプレッドが広がる理由
まず、日本時間の早朝(6時から8時)はNYでの株取引も終わり、主要な市場(マーケット)がオセアニアのみで取引が少ない状態です。
この状態では、ちょっとした注文で為替相場(レート)が大きく動いたり、予期せぬ動きをすることもあり、FX会社がスプレッドを広げて対応をする傾向にあります。
この時間帯に取引をすると取引コストがいつもより余計にかかってしまいます。
②経済イベントでスプレッドが広がる理由
次に経済イベントが発生した時が挙げられます。特に重要なイベントであればあるほどスプレッドは広くなります。
一般的に、経済イベント時のスプレッドの広がり方は、一気に広がるのではなく、指標発表の5分前から1分前あたりから徐々にワイドになっていく傾向があります。
さらに大きな事件、例えばイギリスのEU離脱や東日本大震災の際はそれ以上にスプレッドが広がりました。
今後もそういった大きな出来事があれば30銭、場合によっては1〜2円(100~200銭)広がることもあり得ます。
FXの取引をするときはその日の経済イベントをチェックすることは不可欠ですが、取引をしていきなりスプレッドが広がってきたらなにか大きな動きがあった証拠です。十分に警戒しましょう。
主要通貨3ペア別!スプレッドの特徴
メジャーな通貨ペアについてスプレッドの特徴を挙げていきます。
通貨ペア | 特徴 |
---|---|
ドル/円(USD/JPY) | ・FX投資家が多く取引をしている通貨ペア ・FX会社の取引高の50~80%以上を占める重要通貨ペア ・全体的にスプレッドは狭い |
ユーロ/円(EUR/JPY) | ・ドル/円に次いでトレードされている ・スプレッドはヨーロッパの経済指標やイベントで広がりやすい ・ECB(ヨーロッパ中央銀行)要人の発言前などに特に広がる傾向 |
豪ドル/円(AUD/JPY) | ・中国の経済指標の影響でスプレッドが広がりやすい ・オーストラリア、ニュージーランドの中央銀行の要人発言で広がる傾向 |
FX会社の提示するスプレッドのレートは、どんなときも「固定」というわけではありません。
一瞬の出来事で損失を出してしまうのがFX取引なのです。
とはいえ、時間帯やイベントに注意をしてトレードをすればリスクを下げることは可能です。スプレッドの広がりにも十分注意しましょう。
実際の取引で見るスプレッド
FX会社のレート表示画面では、買値はAsk(アスク)、売値はBid(ビッド)と表示されています。
ドル円を具体例にすると、現在値が「Ask:100.000 Bid:99.997」の場合、ドル円を買う場合は100.000円、売る場合は99.997円で売買することができます。
また、FXには新規注文と決済注文があり、売りの新規注文からも売買が行えます。
上記の例でいうと、すでに保有しているドル円を売る場合(買いポジションを決済するといいます)は「Bid99.997円」となります。
また、同じく新規で売り注文をしたい場合(売り注文を建てる、ショートポジションを持つと表現します)も「Bid99.997円」のレートで約定します。
通常、レートはAsk(買値)>Bid(売値)となっていることがほとんどです。この差がスプレッドです。
このケースの場合は「Ask100.000円-Bid99.997円=0.003円(0.3銭)」となり、スプレッドは0.003円(0.3銭)となります。
FXにおいて、0.3銭は0.3pipsとも表記されます。
スプレッドに関するQ&Aまとめ
スプレッドとは何ですか?
スプレッドとは、買値と売値の差(差分)であり、取引にかかるコストです。
例えば1ドル「100.00円」で買い、売る時は1ドル「99.997円」で売った場合、買値「100.00円」から売値「99.997円」を引いた0.003円(0.3銭)がスプレッドとなります。
FXの取引でスプレッドは気にした方がいいですか?
スプレッドはFX会社によって異なりますが、取引回数を重ねていくと「0.1銭」の違いでも長期的にはパフォーマンスに大きく影響します。
取引コストを抑えたいのであれば、なるべく通貨のスプレッドが狭いFX会社で口座を開設するのが望ましいです。
スプレッドに関して何か注意点はありますか?
スプレッドでは「原則固定スプレッド」と「変動スプレッド」が存在します。
原則固定スプレッドとは「スプレッドが固定でいくらと決められている」ということです。
あくまで「原則的に」であり、早朝や経済イベントが発生するとスプレッドが広がることも多いので注意が必要です。
この記事のまとめ
- スプレッドとは実質的にFXの取引手数料のようなもの
- 通貨の「売値」と「買値」の差をスプレッドと呼ぶ
- 数分単位で取引をする人はスプレッドが広いと不利
- スプレッドが「原則固定」でも、変動することがあるので要注意