ドル/円 1時間足
18日月曜、東京タイム午前に週の安値107.07円をつけましたが、ニューヨークに入り、新型コロナウィルスのワクチン開発への期待から米株が買われたことを受け、一時ドル買いが強まりました。
19日火曜、日銀が22日に臨時金融政策決定会合(※)を開催することを表明したことから、さらなる金融緩和期待が強まり、ドル/円は急上昇し、一時週の高値108.08円をつけました。
日銀金融政策決定会合
日本銀行が金融政策を決定するために開催する会合。総裁、2名の副総裁、6名の審議委員の計9名からなる政策委員から構成され、毎月1~2回定例的に開催されるのが普通で、臨時会合は極めて異例です。
20日水曜、5・10日(ゴトウビ)にあたり10時前の仲値決め(※)で輸入決済のドル買いが強まり、一時107.98円をつけましたが、108.00円に届かず軟化しました。
5の倍数の日を5・10日(ゴトウビ)と呼びますが、この日の仲値では輸入企業が輸入決済をすることが多いためドル買いが強まる傾向があります。
仲値決め
大手行や大手外銀が、その日に企業や個人に使用するレートを10時前頃に決定して公表します。客観性が高いため、仲値決めを採用する企業が多くなっています。
しかし、ロンドンタイムに入って以降、マーケットのロングポジションを崩そうとするドル売りが強まります。
さらにWHO(※)での米中対立が激化したためリスク回避の円買い(※)が強まり、一時107.34円近辺まで急落しました。
WHO
世界保健機関、国連の専門機関のひとつ。最近、中国寄りとの批判が強まっています。
リスク回避の円買い
- 国家間の対立やテロなど、不測の事態によるリスクを回避するため、安全通貨である円が買われるというマーケットでの慣行です。
21日木曜、東京タイム早朝からドル買いが強まってジリジリと上昇(=ジリ高)。
その流れはロンドンタイムまで続き、一時107.85円をつけましたが、再び米中関係悪化懸念からリスク回避の円買いが強まり107.55円まで下落しました。
22日金曜、東京タイム午前、日銀は臨時金融政策決定会合で、中小企業等の資金繰り支援のための「新しい資金供給手段(※)」の導入を決定します。
しかしマーケットは材料出尽くしと捉え、ドル/円は売られました。
新しい資金供給手段
緊急経済対策における無利子・無担保融資を中心とする融資のこと。約30兆円規模。
その後、中国が全人代(※)で香港の統制強化に動いたことから、米中対立がさらに懸念されリスク回避の円買いが強まり、一時107.32円まで急落しました。
全人代
中国の全国人民代表大会のこと。中国の国家の最高権力機関および立法機関。
しかし、翌週の月曜がロンドン・ニューヨーク両市場が休場となり三連休となるため、急速に動意薄(※)となり、107.62での越週となりました。
動意薄
- 相場を動かそうとする熱意が後退することです。
今週は基本的に、国内からドル買い需要が繰り返し強まりました。
これはやはり、GPIF(※)が、総資産に占める外債運用比率を15%から25%まで拡大したことの影響だと思われます(10%の増加分の外債購入のため、ドルを中心とした外貨の購入が必要となり、実際にドル買いに出てきている)。
GPIF
年金積立金管理運用独立行政法人。国民年金、厚生年金という公的年金の運用機関。世界最大の年金基金。
しかしマーケット(特に海外勢)は、まだドル高に半信半疑です。
事あるごとに米中関係悪化などを理由に、ドル高調整の売りを繰り返し、国内勢のドル買いと海外勢のドル売りの綱引き状態で週を終えました。
しかし、GPIFが実際にドル買いを始めている可能性は高く、長期的には一方的なドル高(=ドル高トレンド)となると見ています。
なぜなら、ドル高トレンドになるために最も必要で重要な、円からドルへのフロー(資金の流れ)ができてきているためです。
そのため、今は膠着している相場ではありますが、今後ドル高が進行する可能性が出始めていると見ています。
トレードの際には、こういった新規材料の変化には注目しておくといいでしょう。