国の経済対策における重要ポストに就いている大臣や関係者、金融対策を担う中央銀行総裁や関係者の発言のこと。彼らの発言は金融市場で注目を集め、その結果、相場を動かすケースも多々ある。直接的な発言もあるが、婉曲的な言い回しになることも多い。これは、1990年代のFRB議長を務めていたグリーンスパン氏によるところが大きいといわれる。彼は、複雑な言葉で市場にメッセージを送ることを楽しんでいる風で、彼ほどではないにせよ、現在の要人発言も婉曲的になる場合がある。
物価が適正水準以下であるという発言の裏には、近々利下げを実施する可能性が含まれている。2010年のFRB議長バーナンキ氏は「見通しが悪化したときには、国債や証券の買取を含む手段を講じている」と発言したが、この真意は「量的緩和を行う準備はできているが、直近で何かの対策をするわけではない」となる。
このように、要人発言を読み解くには、その時点の経済的、金融的な背景を理解しておかなければならない。また、同時に発言者のそれまでの立場やスタンスを理解しておく必要もある。たとえば、それまでタカ派と見られていた人物が金利引き上げに消極的な立場を示せば、その信ぴょう性は高くなる。
相場に影響を与える多くは、アメリカの要人発言だが、時々に市場が注目する国の要人発言にも注意が必要である。ギリシア危機のときにはギリシア要人発言が、ブレグジットのときにはイギリス要人発言が、それぞれ注目を集めることになった。ちなみに、日本の要人発言が世界的なマーケットに大きく影響を及ぼすことはほぼない。