ユーロ加盟国の財政が悪化し、デフォルト(債務不履行)の危機に見舞われたときに、緊急融資を行うためのEU内組織。国債の格付けが高いドイツなどの信用力を裏付けに、債券を発行して資金調達をする。
また、市場の動揺で金利が急騰した加盟国の国債を買い支えたり、危機に直面したユーロ圏加盟国の銀行の資本増強にも対応する。Europian Stability Mechanismの略。ESMは、EU加盟国が資金を分担して2012年10月に設立された。
2010年、ギリシアに膨大な財政赤字が発覚し、EUをはじめとする欧州では、欧州ソブリン危機に陥った。このとき、ギリシアを救済するためにEFSF(欧州金融安定基金)が発足した。ギリシア以外のEU加盟国の信用を担保にEFSFが債券を発行し、その資金をギリシアに投入したのである。EFSFは緊急に立ち上げられた機関だったので、融資には各国財務省の全会一致が必要など、やや柔軟性に欠けていたため、それらを改善して組織されたのがESMである。
実際にESMは、ギリシア以外にもポルトガル、アイルランド、スペインにも資金援助をしている。支援を決定する場合、経済対策や規制強化、監督強化などの条件をつけることも多い。
2020年のコロナショックのときにも、ESMはユーロ圏加盟国のために信用枠を設定した。また、欧州投資銀行(EIB)とも協力し、中小企業への支援や失業保険制度への再保険提供など、欧州経済のセーフティーネットとして機能を果たしている。ただし、実際に支援が行われる場合、条件をつけるかどうかで議論が分かれており、2020年4月現在、詳らかになっていない。