FXのファンダメンタルズ分析における重要指標と確認方法
為替市場に影響を及ぼす経済の基礎的条件には、主に以下のようなものがあります。
- 政策金利
- 雇用統計
- GDP速報
- 消費者物価指数(CPI)
- 小売売上高
- 国際収支
- 地政学的リスク
- 要人発言
中でも、為替市場への直接的な影響が大きいのが「政策金利」。
各国の中央銀行が年に4~11回程度、金融政策決定会合を行って決定するもので、公表後には相場が大きく動く可能性があります。
これは、FXでは金利が低い国の通貨を売って高い国の通貨を買い、双方の金利差分相当額(スワップポイント)を獲得するスワップトレードという手法があるためです。高金利の国の通貨ほど注目が集まります。
政策金利の決定には物価の上昇・下落を表す消費者物価指数が影響します。
インフレ傾向にあるときは政策金利を高く(利上げ)して物価の高騰を抑え、デフレ傾向にあるときは利下げして物価の低落を抑えるようになっています。
またアメリカの毎月の雇用統計、および小売売上高の発表時にも、為替相場が大きく動く可能性があります。
雇用統計は、FRB(アメリカの中央銀行)が金融政策の決定するために、非農業部門雇用者数(農業以外の事業所の申告データを元にした統計)や失業率を参考に決めているデータです。
個人消費がGDPのおよそ7割を占めるアメリカでは、国内の個人消費の状況を表す小売売上高も経済状況を表す重要指標。
その他、国家間の経済取引の収支状況を表す国際収支や、特定の地域での政治的・軍事的緊張が経済にもたらす地政学的リスク、政治・経済に関わる要人発言も、為替市場に影響を及ぼす可能性があります。
このような経済指標の発表予定や速報、FX市場における重要度を確認するための情報源としては、各FX会社が提供している「経済指標カレンダー」や、銀行のディーラーによる外為予想・レポート、ロイターやブルームバーグの外国為替ニュースなどがあります。
ファンダメンタルズ分析の活かし方
スイングトレード・スワップトレードなど中長期の投資に役立つ
スイングトレード、スワップトレードといった中長期的な投資には、ファンダメンタルズ分析が役に立ちます。特にスワップトレードは、長期的にポジションを保有し、通貨間の金利差分相当額(スワップポイント)を受け取る手法のため、通貨ごとの政策金利や政治・経済の安定性をチェックしておくことが必要です。
スイングトレードとは、数日から数週間ポジションを保有して、トレンドによる為替差益を狙う手法です。重要経済指標の発表前や発表後にはトレンドが起こることも多いため、その波に乗って取引をします。ただし発表直後はレートが乱高下することも多いため、発表を挟んでポジションを保有し続けるのはリスクが高いため注意しましょう。
重要経済指標発表の際には取引を控えることで急な値動きに備えられる
重要な経済指標の発表時には、FX市場の予測の範囲内であれ範囲外であれ、相場が大荒れになる可能性があります。取引中の通貨に関わる経済指標の発表予定はあらかじめチェックしておき、相場が荒れる前に保有中のポジションの決済を済ませ、急な値動きに備えておくといいでしょう。
過去に大きな値動きが発生した重要経済指標発表の例としては、2015年1月15日にスイスの中央銀行が発表した為替介入中止宣言による「スイスフラン・ショック」や、2016年6月のイギリスEU離脱(Brexit)をめぐる国民投票で離脱派が勝利したことによるポンド相場の混乱などが挙げられます。これらは突然のこと、あるいは大半の市場参加者の予想を裏切る結果によるものですが、当初から予定されている重要経済指標の発表であっても、予想との乖離の度合いによっては市場が大きく動くことがありますので、あらかじめ備えておくことが必要です。
ファンダメンタルズ分析の注意点
ファンダメンタルズ分析はチャートに織り込み済み
「あらゆる経済指標はチャートに反映される」という考え方が存在します。
これは19世紀アメリカの証券アナリスト、チャールズ・ダウによって提唱された理論のひとつ「平均はすべての事象を織り込む」に基づくものです。
どういうことかというと、さまざまな経済指標や突発的な事件・災害ですら、投資家によってチャートに反映される。
値動きは個々の事件や指標の良し悪しでは説明がつかないことも多い。したがってチャート分析が必要ということです。
たとえば、市場に注目され、期待されていた良いニュース(好材料)が出尽くしたあと、「材料出尽くし」により相場が暴騰・暴落することがあります。
また機関投資家の場合、個人投資家よりも広く早く情報を手に入れられることが多いため、個人投資家がニュースを知る頃には、すでに市場の反応を予測して取引を始めていることも考えられます。
そのため、ファンダメンタルズ分析だけをそのまま相場予測に使うのではなく、チャートとして表れる市場の反応を合わせて予測に使うといいでしょう。
チャートを読むにあたり余計な期待が入り込んでしまう
チャートを使ったテクニカル分析をする際や、ポジション保有中で決済のタイミングを見計らっているとき、ファンダメンタルズについての情報が判断を鈍らせることがあります。
値動きから見て損切りをした方がいいタイミングでも、「好材料が出ている・予測されているのだから、これから相場が上昇するかもしれない」と期待を抱いて、ずるずると判断が遅れてしまい、含み損が増え、最後には強制ロスカットという事態も起こりえます。
ファンダメンタルズ分析も頭の片隅に置きつつ、判断のタイミングにはテクニカル分析を使うことが必要です。
ファンダメンタルズ分析のみでは具体的な取引タイミングが分からない
ファンダメンタルズ分析は、長期的な通貨の展望には役立つものの、現在の値動きにどう対応すべきか判断するには向かないことがあります。
価格が上昇・下落傾向にある(トレンド相場)のか、それとも一定の範囲内で動いていない(レンジ相場)のか、これからどう動きそうかなどを読むには、移動平均線などを用いたテクニカル分析が必要です。