移動平均線とは?
移動平均線とは、「為替レートの終値」の平均値をつなぎ合わせた線です。
為替のチャートを見ると、ローソク足チャートに合わせるように2本もしくは3本の線が表示されています。この線が移動平均線と呼ばれるものです。
どう算出されているか
たとえば「5日移動平均線」の場合、5日間(当日〜4日前)の各終値が以下の通りとします。
- 4日前-110.90
- 3日前-110.50
- 2日前-110.30
- 1日前-110.75
- 当日-110.40
各終値を足して5で割った110.57が当日の移動平均値になります。
続いて、翌日の終値が110.10だったとすると、4日前の終値110.90を削除して新たにこの終値を足したものを5で終わり、移動平均値110.41を算出します。
このように一定期間の中で次々と移動平均値を算出し、その値を結んだものが「移動平均線」です。
移動平均線の基本の見方
移動平均線は、世界中で最も使用されているトレンド系インジケーターです。
基本的には、「移動平均線が上に向いているか・下に向いているか」「価格との距離はどのくらいか」を見て、相場の方向性や勢い(=トレンド)を把握します。
- 移動平均線と現在の為替レートの位置関係(以下に詳細)から、為替レートの勢いが分かる
- 移動平均線の傾きから、為替レートのトレンド(上昇か下落か、もしくは横ばいか)が分かる
- 移動平均線を複数描画することで、為替レートのトレンドより詳細なトレンドが分かる
移動平均線を見て分かること
イメージが湧きにくいかもしれませんが、相場の値動きが小さい状態が続くと、為替レートと移動平均線は絡まり合うようになります。
一方で相場が大きく変動すると、為替レートは移動平均線から大きく離れますが、急変動したレートも徐々に平均値に取り込まれていくので、移動平均線が実際の為替レートに近づいていくことになります。
相場の急変動が一時的な場合は、逆に為替レートが移動平均線に近づいていきます。
- 為替レートが移動平均線より上にあると、相場は上昇傾向にある
- 為替レートが移動平均線より下にあると、相場は下落傾向にある
- 為替レートが移動平均線と大きく離れる場合、為替レートと移動平均線は互いに近づこうとする
- 為替レートが移動平均線を上から下に割り込む場合、または、下から上に抜ける場合に、新しいトレンドが発生する可能性がある
移動平均線と為替レートの位置関係とは?
移動平均線の注意点2つ
テクニカル指標にはたくさんの種類があります。
場面や用途によって使い分けることで多くのチャンスをつかめるのはもちろんですが、逆に言えば、万能な1つの指標がないからたくさん使われるようになったということです。
移動平均線にも、魅力だけでなくリスクがあります。
- もみ合い相場では使えない
- もみ合い相場では移動平均線が頻繁にクロスし、売買のサインが機能しないため
- 他のテクニカル指標を使うか、トレンドが発生するまで待つのが良いでしょう
移動平均線の注意点 その1
- 「ダマし」が多いのが特徴で、単純にサイン通りに取引することは危険
- 特に、短期線同士のクロスや長期線同士のクロスは、あまり当てにならない
移動平均線の注意点 その2
移動平均線の期間について
移動平均線を使う際には、期間を自分で設定することができます。
スキャルピングのような高速売買ではなく中長期の取引がメインであるなら、200日移動平均線が一般的です。
中長期の相場を分析する場合多くの人が「200日移動平均線」を使うようで、FXなど投資のツール・指標においては、使っている人が多ければ多いほど有効だと言えます。
200日移動平均線を使う人が多い理由としては、外国為替市場の1年間を考えると、休日を除く実質的な営業日が約200日程度になるからだと考えられています。
世界中の多くの投資家が200日移動平均線に注目すると、200日移動平均線を使った取引手法の効果は上がることになります。多くの市場参加者が、200日移動平均線の指示するポイントで一斉に行動を取るからです。
とはいえ、トレンドをつかんだ後はもう少し細かい流れを見る必要があります。日足チャートの移動平均線では、設定期間を5日や20日にしたものが多く使われています。
1週間の実営業日が5日であること、1か月の実営業日が約20日であることが影響していると考えられています。
ただし、その場合は「ダマシ」も多くなります。移動平均線の設定期間を長くすれば「ダマシ」は減りますが、売買のサインが出にくいのであまり役に立たないかもしれません。
移動平均線の設定期間を短くすれば、為替レートに対する感応度が高くなるので売買のサインが多く出ることになります。
移動平均線での取引手法!実践的な見方・読み方解説
グランビルの法則(移動平均線を使った古典的な売買タイミング)
移動平均線と価格の位置に着目して売買タイミングを測る法則として「グランビルの法則」があります。移動平均線の流れに対して価格が接近したときや離れたときに買いなのか、売りなのかを示してくれるものです。
グランビルの法則
赤い番号付きの丸が買いのポイント、グレーの番号付きの丸が売りのポイントです。
- 1. 為替レートが、移動平均線を上抜けしたら「買い」
- 2. 為替レートが、再び移動平均線の下へ抜けるのですが、その後切り返して移動平均線の上へ出たら「買い」
- 3. 為替レートが下がってきて移動平均線と接近したのち、再上昇したら「買い」
- 4. 移動平均線から為替レートが下へ大きく離れたら「買い」
買い(赤い丸)
- 1. 為替レートが、移動平均線から上へ大きく離れたら売り
- 2. 為替レートが、移動平均線を下に抜けたら「売り」
- 3. 為替レートが、再び移動平均線の上へ抜けるのですが、その後切り返して移動平均線の下へ出たら「売り」
- 4. 為替レートが上がってきて移動平均線と接近したのち、再下落したら「売り」
売り(グレーの丸)
具体的な利用法としては、短期売買で5日移動平均線に注目する方法があります。
為替レートが、5日移動平均線を下から上に抜けたら「買い」、上から下に抜けたら「売り」という単純な手法です。
どういうときに利用する指標?
トレンドを把握したいとき
短期、中期、長期のトレンドを把握する時に、移動平均線の傾きが役に立ちます。
中長期投資であれば、中長期線の相場の方向性を把握してトレンドに逆らわないように取引します。デイトレードやスイングトレードでも、週足や月足チャートで今の大きなトレンドを把握しておくことが重要です。
売買のタイミングを見たいとき
移動平均線の基本的な売買サインが、ゴールデンクロスとデッドクロスです。2本の移動平均線がクロスする場面が、ポイントになります。
短期線が中長期線を上から下に抜けた状態を「デッドクロス」と言い、「売りシグナル」を意味します。
短期線が中長期線を下から上に抜けた状態を「ゴールデンクロス」と言い、「買いシグナル」を意味します。
「期間の短い方の線が期間の長い方の線を下抜け・上抜けする状態」を指すので、中期線が長期線とクロスした時でも、同様にデッドクロスやゴールデンクロスと言います。
どのような場面でも線がクロスしたら売買サインと判断できますが、その時の移動平均線の向きや相場の状況によっては信頼度が変わってきます。
市場の動きを予測したいとき
移動平均線がサポートやレジスタンスになることも多々あります。
相場が下げているときの下値の支持線をサポートライン、上げているときの上値の抵抗線をレジスタンスラインと呼びます。相場がある一定の水準を維持して、それ以上は下落・上昇しないのではないかという予測をすることができます。
練習問題
問題 1
このチャートは、ユーロ円の日足チャートです。200日移動平均線(赤い線)と75日移動平均線(青い線)を表示しています。
この時に、このインジケーター(移動平均線)から、読み取れることを考えてみましょう。
解説
チャートを見ると、200日移動平均線(赤い線:中長期線)と75日移動平均線(青い線:短期線)がクロスしています。このケースでは、移動平均線の短期線が、中長期線を上から下に抜けた状態なので、「デッドクロス」を示しています。
デッドクロスは「売りシグナル」ですから、現れた時点で、「売り」を行います。チャートに示したデッドクロスのポイントで、「売り」を行います。
そして、「売りシグナル」が現れて以降は、75日移動平均線(青い線)が、レジスタンス(上値抵抗線)になっています。
問題 2
このチャートは、ユーロドルの日足チャートです。20日移動平均線(赤い線)と5日移動平均線(青い線)を表示しています。
この時に、このインジケーター(移動平均線)から読み取れることを考えてみましょう。
解説
ユーロドルの日足チャートを見ると、まず5日移動平均線(青い線)が、20日移動平均線(赤い線)を下から上に抜けています。短期線が中長期線を下から上に抜けた状態ですから、「ゴールデンクロス」です。「買い」を行います。
この「買いシグナル」を発してからのユーロドルは上昇して、高値圏で「デッドクロス」が現れます。このデッドクロスで、利確の「売り」を行います。
その後のユーロドルは、もみ合い相場を形成しています。このもみ合い相場の際には、20日移動平均線(赤い線)と5日移動平均線(青い線)が交差してシグナルを出していますが、あまり有効とは言えません。
もみ合い相場が終わると再びデッドクロスが現れているので、「売り」を行います。
この「売りシグナル」を発してからのユーロドルは、下落して安値圏で「ゴールデンクロス」が現れます。ここで利確の「買い」を行います。
その後はまたもみ合い相場に移行しているので、移動平均線があまり有効ではない相場になった、と考えます。