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金融リテラシー協会に聞く「投資詐欺」の手口とは?

現在のFX業界・投資業界に「詐欺」が潜んでいるのはまぎれもない事実です。そういった犯罪が撲滅されることを望むばかりですが、詐欺に遭わないためには「自分たちで防衛すること」も大切。

そこで今回、投資詐欺の撲滅や日本人の金融リテラシー向上を目指して活動している「金融リテラシー協会」にインタビューしました。

お答えいただいたのは、同協会の代表理事を務めている山中康司氏と、監事の安達定幸氏です。

お話を伺った人

金融リテラシー協会 山中康司

一般社団法人 金融リテラシー協会

代表理事 山中康司氏

1982年アメリカ銀行入行、為替トレーディング業務に従事し1989年VP、1993年プロプライエタリー・マネージャーとして為替、債券、デリバティブ等の取引に携わる。1997年日興証券に移り、1999年日興信託銀行為替資金部次長として為替トレーティングとセールスを統括。2002年金融コンサルティング会社アセンダントを設立、取締役。為替情報配信、セミナー講師、コンサルティングをつとめ著書、番組出演等多数。2018年11月金融リテラシー協会代表理事就任。

 

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最近の投資詐欺の手口とは

編集部:本日は、我々が注意したい投資詐欺についてお話をお聞きしたいのですが、まずは「金融リテラシー協会」が設立したきっかけから教えてください。

安達:私は以前から「お金の教習所D3-School」というFXを中心にしたスクールをやっているのですが、投資詐欺に遭って相談しに来る人が非常に多いのですよ。だいたい皆さん、相手にお金を払ってしまった後に私のところに来て「こんな話があるんですけど、どう思いますか」と相談する。

内容を確認すると、ほぼ詐欺なのですよね。我々が見るとすぐに詐欺だとわかるのですが、無知な方はわからないので、結果的に被害に遭ってしまっている。

世の中には投資の手法や、「こうして稼ぐんだよ」ということを教える場は山のようにあるんですが、「お金の守り方」や詐欺などから身を守るための金融リテラシーを教えるようなスクールとかは、まずありません。

これは必要だろうということで、金融リテラシー協会を作ったというわけです。

山中:私も、FX業者さんや証券会社さん向けのセミナーやお客さんとの会話の中で、「詐欺に遭っている」という話を結構聞いていたんですね。

これはやはり何とかしないといけないなと思いました。そういう活動を積極的にしている人もいなかったので、安達から話をもらい、やってみましょうと。

詐欺の被害をなくすためには、そもそも何で詐欺に遭うのかを考えなければいけませんが、「金融リテラシーのレベルが低い人があまりにも多い」ということもあると思います。そのあたりを啓蒙できないかというのが、設立時の思いにはあります。

編集部:実際にお二人とも、詐欺の相談を数多く受けていたのですね。今、投資詐欺にはどのようなものがあるのでしょうか?

安達:今は主に二つのパターンがあって、一つはSNSを使ってフォロワーを集め、お金を集めていく方法。もう一つは「HYIP(ハイプ、High Yield Investment Program)」という、マルチ商法のように説明会で人を集め、儲かりますと勧誘する方法があります。

一つ目のSNSを使う方法というのは、まず詐欺グループが最初に「こんな投資があってすごいですよ」という肯定派のツイートをするわけですよ。

すると、別の人もしくは同じ人が「これはインチキだ!」と否定して舌戦を始めるんです。ケンカにはギャラリーが集まりますので、フォロワーが増えるわけですよね。

人が集まっていく中で、肯定派と否定派が入り混じってワーワーと戦うのですが、その否定派の人間が「お前がそこまで言うんだったらやってみようじゃないか」という演出をするわけです。そこで「やってみたらこれは本物だ!」という風に、否定派が肯定派に変わっていく。そんな仕掛けでお金を集めていくというのが多いですね。

彼らはTwitterだけで月に何千万というお金を集めています。アカウントをひとりで5つも6つも持っていて、あるときはAさんになりすまし、あるときはBさんになりすまし…。そういうのが20人くらいでチームを組んで、動画などいろんなコンテンツを発信しています。

編集部:なるほど。それまで強く否定していた人が肯定派に変わると説得力があるように見えてしまいますが、そもそも自作自演ではないか?という視点を持つことは大切ですよね。 もう一つの「ハイプ」というのはどういう手口なのでしょうか?

安達:これは説明会をやって人を集め、出資者の残高を見せて「お金が増えている」という演出をしたり、自分の豪遊ぶりを見せたりする手口です。

画面上ではお金が増えているように見せているんですよ。捏造ですからいくらでもそう見せられるんですが、いざ出金しようとなるとできなくなる。

ちょうど今はコロナの影響もあってお金が借りやすくなっていますよね。政策金融公庫からお金を借りて「実体経済は先行きがわからないから」と、投資に走る人が多いんです。そして何千万と借りて、こういった詐欺に遭い、出金停止になってしまっている人がたくさんいます。

編集部:なぜ、多くの人がそんな手口に引っかかってしまうのでしょうか?

安達:「お金が増えていますよ」と見せるデータが非常に手が込んでいるので、普通の人は見破れないんじゃないかと思います。とくにFX会社と結託して捏造データを作れば、お金が増えているという画面は作れますから。トレードしていないのに、やっている風に表示されるようになっている。

僕らは見ればわかるのですが、普通の人は見極め方がわからないから、信じちゃってるんですよね。あとセミナーにはサクラも入っているんでしょうけど、「私もこんなに増えました」みたいなのを見せて、知り合いが知り合いを誘っていく。

私がいくら「これは詐欺です」と教えても、セミナーに参加して、何億何十億と稼いでいると自称している人たちの話の方を信じてしまっている。

ですから基礎の金融リテラシーと、なおかつ詐欺の手法を正しく勉強しないと、だまされ続けてしまうのではないかと思っています。

山中:だいたいそういうのってMT4を使っているケースが多くて、日本でいうとファンドとか投信みたいな感覚で、業者が「1000万円を入れたらだいたい年間30%くらいの利回りがあります」などと誘い、お金を入れると飛ばされて(出金停止になって)しまう。

しかも、スマホやPCツールをうまく使いこなせない人たちがだまされているケースが多く、飛ばされていることに気付いてないんですよ。自分が見ているページが何のページなのかもわからない。「MT4をPCで見たことないんですか?」と聞いてみても「スマホでしか見たことがない」とか。「じゃあログインはどうしてるんですか」と聞くと「その会社自体が今はもうないんです」と言われたり。

そんなことでは裁判をしても勝つのが難しいんじゃないかっていう人が、けっこうな金額をだまされている。そういう場合、みなさん数千万円という単位でやられているんですよね。

持っているお金をさらに増やしたいという気持ちは、わからないではないです。しかしそんな「濡れ手に粟」みたいな話が世の中にあるわけがないと、なぜ思わないのかなと。

もちろん投資っていうのはある程度、欲のある人たちがやることなのですが、その欲の方に目がくらんでしまって、現実とか、裏にあるおかしいことが見えなくなってしまっているかもしれないですね。

編集部:投資をする以上、誰しも「増やしたい」という欲がありますが、欲に引っ張られすぎると常識的な感覚を失ってしまう。肝に銘じておきたいですね。 では、金融リテラシー協会に相談しに来た人から「どういうFX会社を選べばいいんですか?」と聞かれたときは、何と教えているのでしょうか。

山中:やはり、日本の金融庁や財務局で登録されている業者であったら間違いないということですね。海外業者には証拠金の保全といったこともどうなるかわからない。戻ってこないケースもさんざん見ているので、取引するんだったら国内で登録されている業者さんでやった方がいいですよ、というのが大前提です。

逆にちゃんと登録されている業者でやるんだったら、あとはそれこそ、取引ツールの違いだとか、情報とか、キャンペーンで食べ物がもらえるとか、そういうので選んでもいいと思います。最終的には個人の好みだと思うので。

その他にアドバイスすることといえば、1社というのは何かあったときに困ることもあるので、少なくとも2社に口座を開いておくといったことでしょうか。

たまにしかないことですけど、取引ができなくなってしまったとき、たとえば買いポジションを持っているけれど下がり始めてしまって売らなきゃいけないっていうときに、1社で取引ができなくなってしまっても、他で売りから入ることもできますので。

2社あればリスクヘッジもできるだろうということで「国内の業者で、自分の好みのものを2社見つけてみればいい」という感じで教えています。

だいたい、海外業者でやる人っていうのはレバレッジ何百倍というのに惹かれて、わけのわからないところでやってしまっているというのが多いですね。入金するとボーナスがもらえるとか。

そういった海外業者の中には、いっさいカバー取引をしないところもあるんです。仮にお客さんが何百万円かの証拠金を入れたとすると、その「証拠金=利益」だというつもりでやっていますよね。要は、ちょっと動き始めたときにスプレッドを広げてストップ狩り状態にするわけです。

編集部:日本の金融庁に登録されたFX会社がたくさんあるのに、わざわざ海外業者を選ぶ理由はないということですね。

山中:今は海外も、G7諸国は30倍などとレバレッジを下げる流れになってきています。30倍と25倍だったら日本の25倍でいいだろうという話になりますよね。

安達:日本やアメリカ、イギリス、スイスなどはライセンスがすごく厳しいですが、聞いたこともないような〇〇島のライセンスとかは、お金を払えば簡単に営業開始できますからね。そういうところは、はっきり言って登録業者の意味がないですよね。

金融リテラシー向上のために

編集部:お話をうかがっていると、山中さんが冒頭にもおっしゃったとおり「金融リテラシーが低い人が多い」という問題も大きいでしょうね。

山中:リテラシーの低さといってもいろいろな部分があると思うんですが、例えば日本では、投資に対して悪だというイメージが以前からあります。

ある程度「投資」というものをやっている人はそれなりにわかると思うのですが、やったことがない人があまりにも多い。そういう人たちはそもそも、金融リテラシーを身に付けようという意識まで行っていないのではと思います。

東京証券取引所のJPXグループでも、一時期、そういうリテラシーを高めていこうということで、あらたな部署を作ったりしました。金融庁も「金融リテラシーについて」という動きを始めて、実際に来年から高校の授業でも金融教育が始まるのですが、そうは言っても「教える側がそもそもどの程度わかっているのか」という問題があります。

長年続いてきた、日本の貯蓄を重視するような姿勢というのが裏目に出てしまっている。「貯蓄だったら安心だが投資は元本割れがある」と。

そんなことを言ったら元本割れする可能性のあるものはすべて手を出せなくなってしまうと思うのですが、そういった投資に対する警戒感、半分は恐怖だと思うんですが、そういったものが何も改善されることなく来てしまっている。

ごく一部のわかっている人だけがわかっていて、そうじゃない人については「知る機会」さえなかったのではないかなと。

そういった部分を、金融リテラシー協会に限らず、きっちりと教育していくような組織なり仕組みなりが必要になるんじゃないかとは強く思いますね。

安達:金融リテラシー協会の事務局は大阪にあるのですが、とにかく毎日のように投資案件が持ち込まれてます。100件あったら、ほぼ100件が「やったらダメなやつ」。中途半端な金融知識でやっているのでまともだと信じてしまっているんです。

いつも山中代表理事とも話しているんですが、日本人の金融リテラシーを向上させないと、日本は本当にまずいことになってしまうのではと思っています。日本が復活するためには、今までのような実体経済で生産してどうこうというよりも、金融を正しく学ぶことが大切ではないかと。

勤勉であり真面目である日本人が金融を正しく学べば、スーパートレーダーと呼ばれる人たちは全て日本人で独占されるんじゃないかと信じていますけどね。

編集部:確かに。投資詐欺を撲滅するだけでなく、日本の未来のためにも「金融リテラシー向上」を目指していきたいですね。 微力ながら、私たちメディアも一緒に取り組んでいきたいと思います。本日は貴重な話を聞かせていただき、ありがとうございました。

金融リテラシー協会の
公式HPを見る

この記事の執筆者

エフプロ編集長 斎藤直人

エフプロ編集長

斎藤直人

SAITO NAOTO

略歴

編集者歴19年。主に紙媒体で編集経験を積み、趣味系雑誌4誌の編集長を歴任。雑誌の特集記事だけでなく、企業とのタイアップ企画、地域活性化事業への参画など、コンテンツ制作力を活かして幅広いフィールドで活躍。国会議員、企業の重役、スポーツ選手、芸能人などジャンルを問わず幅広いインタビュー経験を持つ。現在は株式会社キュービックのエディターとして、エフプロを中心に記事クオリティ向上に尽力中。

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