トレードを行う際、いくつかの戦略を持つことは有効です。
多くの個人投資家は単に「安くなったら買いたい」、または「高くなったら売りたい」と考え、チャートでそのタイミングを探ろうとします。
確かに「安い」と思った水準で買いポジションを取り、その後上昇をして利益に結び付くこともあります。また、ある程度上昇を続け、そろそろ下げるのではないかと、最近の価格だけで判断して売りポジションを取って利益に結び付くこともあります。
しかしそれはある期間の中で、価格が往来を繰り返すのであれば有効であった考えかもしれません。
多くの個人投資家は、最近の価格水準を意識し、その価格を判断の基準として、今が高い、または安いと判断をしてしまう傾向があります。
しかし、価格のみで相場水準を判断することは危険です。その理由は、価格のレンジはその時々で変化するからです。
それではどうすれば良いのか?
今回はシンプルな考えで上昇局面のときに下がった場面(押し目)と下降局面のときに上がった場面(戻り)を探る考えについて触れてみます。
トレンドフォロー系テクニカル
はじめに、今の相場が上昇曲面なのか、または下降局面なのかを探るためには、どのようテクニカルを用いれば良いのでしょうか?
一般的には「トレンドフォロー系」のテクニカルで現在が上昇局面なのか、下降局面なのかを判断します。
トレンドフォローとは、現在の相場の流れを判断し、その流れに沿ったポジションを構築することです。
今現在が上昇局面のときは、買い目線でチャートを見ることを意識し買い、反対に下降相場のときは、売り目線で相場をみて売りを行います。
そして、今の相場の方向を確認するために使われる指標がトレンド系テクニカルになります。
主なトレンド系テクニカルは、移動平均線、指数平滑移動平均線、パラボリック、一目均衡表、新値足、平均足、エンベローブなどです。これらは相場が上昇局面のときは上昇していることを示します。
例えば2019年後半の国内株式市場は上昇トレンドを描いていました。またNYダウは新高値を更新し、ドル円も106円レベルから110円を目指す動きをしていました。
例えばこのときに遡ってトレンドフォロー系テクニカルの代表各である、移動平均線(20期間)でチャートを確認すると、この移動平均線は右肩上がりで、ほとんどの期間、価格も移動平均線の「上」で推移していました。
つまり、トレンドフォロー系テクニカルを使って、買いを行う場合。
今の流れを確認しながら、今後もその流れが続くだろうと判断をして「安いところ」で買い、その後上昇した局面で決済をすることになります。
トレンドフォロー系テクニカルの短所
しかし、トレンドフォロー系テクニカルは欠点もあります。
それは、実際の価格に対して遅れて反応するということです。
下の画像はローソク足に移動平均線を表示したものですが、価格はⒶのレベルを底に上昇に転じています。しかし、移動平均線が上昇を示したのはⒷの水準えを過ぎた後になっています。
つまり、トレンド系テクニカルは遅効性があり、実際の価格よりも遅れて反応をする傾向があるため、上昇してすぐにその流れに乗ることは難しくなります。
オシレーター系テクニカル
一方、トレンド系テクニカルの反対側にあたるオシレーター系テクニカルは、 相場の流れに対して反応が早いテクニカルになります。
オシレーター系テクニカルとは、買われ過ぎや、売られ過ぎを示す指標で、ある程度上昇した後に、そろそろ下がるだろう、またはある程度下降した後に、そろそろ上がるだろうと、逆張り手法に適しています。
オシレーター系テクニカルは、RSI、ストキャスティクス、MACD、サイコロジカルライン、乖離率、CCIなどがあげられます。
下の画像はオシレーター系テクニカルの代表格であるストキャスティクス(5期間)です。
Ⓐの水準が買われ過ぎのレベル、Ⓑの水準が売られ過ぎのレベルで、逆張りでトレードを行う場合、価格がⒶの水準まで上昇した際に、そろそろ下がるだろうと想定をして売りを行います。
反対にⒷの水準まで下げた際に、そろそろ上がるだろうと想定をして買いトレードを行います。
このように、オシレーター系のテクニカルは、実際の価格に対して反応が素早い特徴があります。
オシレーター系テクニカルの短所
しかし、相場はトレンドを伴って大きく上昇をしたり、大きな下落局面が長引くこともあります。
実はオシレーター系のテクニカルにも欠点があります。
それは価格が一定のレンジを超えて動き出すと、買われ過ぎ、または売られ過ぎの状態が長引いてしまうということです。
下の図では、価格がトレンドを伴って上昇を続けています。先ほどの図と比べて価格の上下もなく、上昇トレンドが継続しています。
この様なときのオシレーターの動きは、買われ過ぎの水準で張り付いたままの状態が続いています。
例えば、価格が上昇してきた時点でそろそろ下がるだろうと、オシレーター系テクニカルを使って、売りトレードを行ったとしても、価格は更に上昇に転じ、下がると思っても上昇が加速し、損失だけが大きくなってしまいます。
これがオシレーターの罠で、相場が行き過ぎた水準または過熱感が出てきたところで逆張りトレードを行うとすぐに大きな損失へとつながってしまいます。
テクニカル分析の本質
このように、トレンド系のテクニカルとオシレーター系のテクニカルをみていると、テクニカル指標は万全でなく、欠点もあるということです。
元々テクニカル分析は、一定期間の値動きを参考にして、今後も一定の流れになるだろうと想定をしてトレードを行うことが前提です。
つまりテクニカル分析は過去の価格を参考にしているだけであり、将来を占うものではありません。
多くの個人投資家は、例えば「〇日移動平均線が〇日移動平均線を超え、ゴールデンクロスを描いているから」または、「オシレーター指標を参考に、ここまで売り込まれたのでそろそろ反発をするのではないか」と買い急いでしまうと、大きな痛手になることもあり得ます。
また、仮に全てのテクニカル指標を網羅したとしても、勝ち続けることは不可能と言ってもいいでしょう。
テクニカル分析は使いどころとは?
それでは、テクニカル分析は効果がないのかというと、そうではありません。
私が運用しているトレードプレスというサイトでは、テクニカル分析のコンテンツが多く占めています。
テクニカル分析があってこそ、今買うべきなのか、または売るべきなのかを判断することができます。
また、仮に各国の失業率、金利、経済動向等を知ったとしても、いつマーケットに参入するかのタイミングは、やはりテクニカル無しでは判断できません。
要は、テクニカル指標を使ってトレードをする際には、1つのテクニカル指標に偏ることなく、個々の長所と短所をあらかじめ知った上で使いこなすことが大切なのです。
そして何よりも、テクニカル分析は、マーケットに参入するタイミングを教えてくれます。
その後の値動きに関しては、いざポジションと取ってみないと予測はできませんが、仮に間違えた場合は、損切りによって大きな損失を避け、またトレードを行える資金を残すことも可能になります。
一定の利益を上げるためには、個々のテクニカル指標の欠点を知り、長所も具体的に知っておくことが大切です。
そして長所を組み合わせることで、いろいろな相場の局面に対応できるトレードがしやすくなってきます。
2つのテクニカル分析の特徴まとめ
もう一度、先ほど確認をしたトレンド系テクニカルとオシレーター系テクニカルの長所と短所のおさらいをして、良い点を組み合わせたトレード例を確認していきたいと思います。
トレンド系テクニカルの長所
- トレンドが発生した場合、その方向を示してくれる
- 視覚的にも現在が上方向なのか、下方向なのかがわかる
トレンド系テクニカルの短所
- 実際の価格に対して遅延して反応をしめす
- 買い(売り)だろうと思ったときには既に反転してしまうこともある
オシレーター系テクニカルの長所
- 価格変動に遅れが少ない
- 現在が買われ過ぎなのか、売られ過ぎなのかがわかりやすい
オシレーター系テクニカルの短所
- 一方的なトレンドが継続すると、買われ過ぎ、または売ら過ぎを支示したままの状態になる
- 多くのオシレーター系テクニカルはどれも似通っている
トレンド系テクニカルとオシレーター系テクニカルの組み合わせ方
具体的なテクニカルの組み合わせの前に、『多くのオシレーター系テクニカルはどれも似通っている』について触れてみます。
下のチャート画像は3つのオシレータ系テクニカルを並べたもので、Aがストキャスティクス、BがRSI、そしてCCIになります。
この期間、相場は上下を繰り返して推移していますが、どのオシレータ系テクニカルの売られ過ぎ水準(青の四角形)、そして買われ過ぎ水準(赤の四角形)、はほぼ同じであることが分かります。
このように、オシレーター系のテクニカルは、一定期間の中で上下を繰り返す場合、大差がないということです。
このことを踏まえて、トレンド系テクニカルとオシレーター系テクニカルを組み合わせた考え方の例をあげてみます。
オーソドックスな考え方は、相場が上昇を示しているときに、安い水準で買い持ちをし、相場が下降を示しているときに、高い水準で売り持ちをすることです。
この条件に当てはまる考え方の1つは、ある期間の移動平均線の傾きが上昇しているのか、または下降しているかを確認し、上昇をしているのであれば、ストキャスティクスが目先売られ過ぎの水準で買い、反対に売りのタイミングは、移動平均線が下降を示している過程で、ストキャスティクスが目先買われ過ぎの水準に達したレベルで売り持ちをすることになります。
下のチャート画像上では、価格の上昇に伴って、移動平均線も緩やかに傾きが「上」を示しています。その過程で途中(赤丸印)ストキャスティクスが売れ過ぎを示しています。そのレベルで買い持ちをして、その後の上昇で利食い決済を行います。
もし、移動平均線のみで買いのタイミングを探ろうとすると、価格が下降から上昇に転換をし、その後移動平均線が上昇を示すまで待たないといけません。
しかし、テクニカルの長所を組み合わせることで、相場が上昇を示しているときに「押し目」で買うことができ、売りの場合は、相場が下降を示しているときに「戻り」で売ることができます。
■さらに踏み込むと、大きな流れを確認する際に、移動平均線でなく、上位足を使い、期間の長いオシレーターの傾きで、上昇か下降かのトレンドを確認して、下位足(実際にタイミングを確認する時間足)でマーケットに参入する考えもあります。
たとえば、15分足を使ってトレードをする場合、その上の時間足(この例では1時間足)のストキャスティクスの傾きを確認します。この例では、1時間足のストキャスティクスが売られ過ぎの水準から反転を示しています(青丸印)。
このときに、大きな流れは「上」を向いていると判断をし、15分足のストキャスティクスで売られ過ぎの水準(赤丸印)に押したタイミングで買いを持つことになります。
この場合のメリットは、異なる時間足のチャートを確認することで、大きな流れを確認し、その流れに合わせてポジションを取ることができるということです。また、トレンド系テクニカルの短所であった遅行性をカバーすることも可能になります。
最後に
テクニカル分析を行い、ポジションを取ること自体は、ファンダメンタルズ分析と比べて多くの利点があると考えていますが、1つのテクニカルが必ずしも万能ということはありません。
このことを踏まえて、長所、短所を確認した上で、良い部分を組み合わせることが大切です。