FXと株の違い
FXと株はどちらも個人投資家に人気の投資商品です。知名度の高い金融商品という点では共通していますが、FXと株にはさまざまな違いがあります。
これから投資を始めたいと考えている人に向けて、最初にFXと株の違いについて比較をしつつ両者の違いを解説します。
FX | 株 | |
---|---|---|
投資対象 | 通貨 | 企業 |
投資対象の数 | 数十種類 | 数千種類 |
キャピタルゲイン | 買いも売りも可能 | 基本的に買いのみ |
インカムゲイン | スワップポイント | 配当金 |
取引時間 | 平日24時間 | 9:00~11:30 12:30~15:00 |
必要資金 | 5,000円〜5万円 | 1万円〜10万円 |
レバレッジ | 最大25倍 | 最大3.3倍 (信用取引) |
手数料 | 無料 | 証券会社によって異なる |
値動き | すべて雑所得 | 譲渡所得(売買益) 配当所得(配当金) |
相場変動要因 | 金融政策 経済指標 | 企業の業績 |
投資対象と数
FXと株とでは、投資の対象が異なります。株の投資対象は企業が発行する株式で、FXは世界各国の通貨が投資対象です。
株式投資では基本的に企業が発行している株式を取引(現物株取引)しますが、FXでは「差金決済取引」といい、通貨の現物をやり取りするわけではありません。通貨ペアと呼ばれる商品を売買し、その差額で決済します。
株式投資の場合は、希望すれば購入した株券を自分の手元に保管することもできますが、FXではポジションと呼ばれる「未決済の持ち高(建玉)」を保有しているだけなので、通貨の現物を手にすることはありません。
建玉(たてぎょく)
未決済の契約総数のこと。英語ではポジションといいます。
通貨ペア
米ドル/円、英国ポンド/円など。通貨ペアによって取引量(金額)や値動きが異なります
株式投資は投資対象数が多く、上場している企業だけでも3,800社もあります。
対してFXは、米ドル・ユーロのような世界の数十種類の通貨を扱います。
取引時間
株式投資は証券取引所で取引するため、取引できるのは証券取引が動いている時間帯に限られます。東証の場合は9時〜11時30分、12時30分〜15時まで。
これに対して、FXは平日の24時間いつでも取引可能です。FXの取引対象である外国為替市場は世界中にあり、時差の関係で常にどこかの市場で取引が行われています。そのため、FXは日本からであっても24時間取引ができます。
キャピタルゲイン
キャピタルゲインとは、保有している資産を売却することによって得られる利益のことです。分かりやすい具体例としては、不動産の家賃収入でしょう。株とFXにも、それぞれキャピタルゲインがあります。
株式投資は安い時に買った株が値上がりし、それを売れば利益確定します。この差額は、株式投資によって得られるキャピタルゲインです。
FXも同様に、安い時にポジションを建て、高くなった時に売ればキャピタルゲインを得られます。
ただしFXの場合は売りからも同条件で取引できるため、高い時に売って安くなった時に買い戻してもキャピタルゲインを獲得できます。
株式投資では、信用取引の空売りという仕組みで同様の取引が可能です。ただし信用取引をするためには専用口座を開設する必要があり、誰しも信用取引ができるわけではありません。
信用取引
現金や株式を証券会社に担保として預け、担保の3.3倍の取引ができる仕組みで、通称「空売り」。対象となる銘柄を売り建て、決済日までに買い戻しその差額で利益を狙う
インカムゲイン
インカムゲインとは、金融資産を保有しているだけで得られる収入のことです。分かりやすい具体例としては、不動産の家賃収入でしょう。株とFXにも、それぞれインカムゲインがあります。
株式投資には、配当金と株主優待があります。企業は利益を出資者である株主に配当金の形で分配するため、株を保有していると定期的に配当金を受け取ることができます。ただし、配当金を分配していない企業もあります。
株主優待は企業が自社サービスや優待品を贈る制度です。
FXには、スワップポイントと呼ばれるインカムゲインがあります。金利の低い通貨を売って金利の高い通貨を買うポジションを保有すると金利差を調整するために、スワップポイントが付与されます。
株式投資の配当は、年に1回もしくは2回であることがほとんどですが、FXのスワップポイントは毎日発生します。土曜日や日曜日は休日なのでスワップポイントの受け渡しはありませんが、その分を水曜日など平日に付与するため、1週間の中で3日分のスワップポイントが発生する日があります。
取引に必要な資金
株式は多くの銘柄が100株単位で取引されているため、例えば、株価が100円の銘柄であれば最低限必要な資金は1万円です。株価が1,000円の場合は、10万円となります。
対してFXは、1000通貨から取引されるのが一般的です。例えば、ドル円(1ドル=150円)を取引する場合、1,000ドル=15万円が必要な資金となりますが、FXの場合は「レバレッジ」という仕組みがあるのが特徴。
実際にはこれよりも少ない金額で取引することも可能です(以下で詳しく解説します)
レバレッジ
FXの場合はレバレッジを利用することができます。レバレッジは、少ない資金で大きな金額の運用ができる仕組みのことで、FXでは最大で25倍までのレバレッジを効かせて取引することが可能です。
例えば、米ドル/円のレートが150円の時に1,000通貨のポジションを建てる場合、必要な資金は15万円ですが、25倍のレバレッジをきかせると6,000円の証拠金で取引可能です。
ただしこれは「証拠金」であり、FXは株式投資のように現物を保有することはできません。
もしも含み損が大きくなって証拠金が一定の水準を下回ると強制的にポジションが決済され(強制ロスカット)、損失が確定してしまう恐れがあります。
証拠金(保証金)
取引する際に最低限口座に必要なお金のこと。
計算式は「為替レート×取引通貨量×証拠金率」
強制ロスカット
含み損が拡大し、証拠金維持率が規定のレベル以下になった場合に、FX会社が保有する建玉を強制的に決済すること
先ほどの条件で米ドル/円のポジションを保有する場合、少なくとも3万円程度の資金を用意して余裕を持たせることで、強制ロスカットになる事態を遠ざけることができます。
証拠金がギリギリだと、予想と違う方向にわずかに動いただけで強制ロスカットされてしまうこともあるためです。余裕を持たせておくことで一時的に含み損を抱えても、相場が戻るまで建玉を持ち続ける余裕ができます。
手数料
株式投資では、証券会社ごとに取引手数料が異なります。ネット証券の楽天証券やSBI証券では、現物株取引の手数料は無料となっています。その他の証券会社では、取引金額ごとに手数料が設定されていることが多いです。
FXでは、多くの会社で取引手数料が無料となっています。しかし、FX取引ではスプレッドと呼ばれるコストが発生します。
スプレッド
実質的なコストですが、別途支払いは必要はなく取引をした際に損益に上乗せされる
例えば外為どっとコムの場合、米ドル/円のスプレッドは0.2銭
1000通貨を取引すると「0.2銭×1万通貨=2,000銭」、つまり20円となります
値動き
一般的なイメージとして株とFXを比較すると、レバレッジの仕組みのためかFXの方がハイリスクハイリターンであると感じている人は多いかもしれません。しかし「値動きする幅」に関していえば実際はFXよりも株の方が大きく動く特徴があります。
例えば、ユニクロで有名なファーストリテイリング(9983)は、上場当時の株価が2,000円台でした。2024年5月現在では4万円台の株価を付けているので、その差は約20倍です。
FXで米ドル/円のレートが100円から2,000円になることは考えにくいので、両者を比較すると株の方が大きな値動きが起きやすいことがお分かりいただけると思います。
相場の変動要因
株は、個別では会社の業績、市場全体では景気や為替、金利が変動要因となります。
FXの場合、ドル円で運用するトレーダーが多いため、米国が発表する経済指標には多くのトレーダーが注目し相場が大きく動くことも珍しくありません。
金融政策に関しては、FXも株も相場への影響は大きくなります。
また、それぞれ値動きが大きくなるタイミングがあるので注意しましょう。株は前場が終了する前の11:00〜11:30、後場が始まった直後の12:30〜13:00に値動きが大きくなりやすい傾向があります。
FXでは、世界各国の市場の時間帯(東京市場・ロンドン市場・ニューヨーク市場)が切り替わると、それまでの値動きとは傾向が変わることも多いため注意が必要です。
税金
株とFXを税金面で比較すると、異なる点がいくつかあります。ここでは一覧表を用いて解説します。
株 | FX | |
---|---|---|
所得区分 | 売買益は譲渡所得 配当は配当所得 |
すべて雑所得 |
課税方法 | 売買益は申告分離課税 配当は源泉分離課税 |
すべて申告分離課税 |
税率 | 20.315% | 20.315% |
確定申告について | 売買益は確定申告によって納税 配当は源泉徴収で天引き |
確定申告によって納税 |
株・FX共に給与所得者の場合は、年間20万円以下であれば非課税となります。
FXと株のメリットデメリット
株のメリット
株とFXの違いを比較するのにあたって、まずは株のメリットとデメリットについて解説します。まずメリットについては、主に以下の3点が考えられます。
①銘柄数が豊富で選択肢が多い
東証には2024年5月時点で約3,800社の上場銘柄があります。FXの投資対象である通貨ペアと比べると種類が多く、株式にはとても広い投資の選択肢があります。
②株主優待がある
上場銘柄のすべてではありませんが、株主優待といって株主に特典を設けている銘柄があります。株主優待を実施している銘柄の株を保有していると、自社製品の詰め合わせやサービスの優待利用券、さらには金券類などがもらえます。
株主優待は日本独自のユニークな制度で、桐谷広人さんという株主優待で獲得した商品やサービスで生活をしていることで知られる有名な投資家もいます。
③現物株の場合、ロスカットがない
現物株に投資している場合、レバレッジをきかせていないため、どれだけ株価が下がっても証券会社によって強制的にロスカットされることはありません。
いわゆる「塩漬け」(やむをえず、長期保有する)をして、株価の回復を待つ選択肢が残されているのは、現物株ならではです。
ただし、ストップ高・ストップ安という値幅を制限する制度があります。
ストップ高・ストップ安
株価の急な変動で投資家に大きな損害を与えないようにするため、前日の終値から一定限度内に値幅を抑制する制度。
株のデメリット
株はFXにはない魅力がありますが、一方でもちろんデメリットもあります。具体的には、以下の3点が考えられます。
①選択肢が多すぎて投資対象を見つけにくい
銘柄数がとても多いため、人によっては選択肢が多すぎることがデメリットになります。
株式投資に慣れている投資家であっても、自分の知識や経験だけで投資するべき銘柄を絞り込むのは難しく、専用のスクリーニングツールや四季報などを利用しています。証券会社の中には特定のテーマに関連する銘柄が複数組み込まれた投資信託もあります。
②FXと比べると必要資金が多い
FXと比べると株は投資に必要な資金が大きいです。少額から始めたい人にとっては資金的なハードルが高く、損失を出した時のダメージがFXよりも大きくなる可能性があります。
③最悪の場合「紙切れ」になるリスクがある
万が一、保有している銘柄の企業が倒産してしまうと、株券は紙切れ同然の価値になってしまいます。FXではあまり意識されないリスクですが、「最悪の場合は保有資産が無価値になるリスク」がゼロではないことは、株特有のデメリットです。
FXのメリット
株に続いて、FXのメリットとデメリットについても解説しましょう。FXのメリットは以下の3点が考えられます。
①レバレッジをきかせて少額から取引ができる
レバレッジをきかせられるのは、FXの大きな特徴です。最大25倍まで投資効率を高められるので、例えば米ドル/円で1,000通貨分のポジションを建てるのに最低限必要な資金は6,000円(1ドル150円の場合)
最小取引単位が1通貨の会社もあり、その場合は小銭程度の資金で取引できます。少額から始めることができるのは、大きなメリットといえるでしょう。
②取引できる時間が長い
FXは平日のほぼ24時間いつでも取引が可能です。取引できる時間が長いので、例えば「寝る前のちょっとした時間に取引する」といった人もいるでしょう。
③買いと売りが同条件
買いからのエントリーと売りからのエントリーが同条件なので、相場が下落局面であってもエントリーしやすいのもFXの特徴です。上昇局面だけでなく、下落局面でも利益を出せる可能性があります。
FXのデメリット
当然ながらFXにもデメリットはあります。以下に解説していきます。
①レバレッジを高くしすぎるとハイリスクになる
レバレッジをきかせられることはFXのメリットですが、その一方でレバレッジを高くしすぎると資金的な余裕が少なくなり、強制ロスカットになるリスクを高めてしまいます。
つまり、資金効率を高められる一方、資金を減らすスピードも上げてしまう可能性があるということです。
②最悪の場合、証拠金以上の損失が発生することも
FXの強制ロスカットという仕組みは、ほとんどの場合「証拠金が手元に残る状態」で決済されます。つまり、入金した証拠金以上の損失を被ることはほとんどないのですが「絶対にない」わけではありません。
強制ロスカットが間に合わないほど相場が急変動した場合は、証拠金以上の損失が発生する可能性があります。非常にまれなケースとはいえ、こういったリスクを含んでいることは知っておく必要があるでしょう。
FXと株の始め方
株とFXにはさまざまな違いがあることを解説してきましたが、実際にそれぞれの投資を始め方や基本知識をご紹介します。
株
株式投資では、3つの利益(売買益・配当金・株主優待)があります。どの利益を狙うのかで選択する銘柄は変わってくるでしょう。
株式を買う場合は、指値(さしね)注文または、成行(なりゆき)注文を用います。
証券会社では、株式の他にも様々な投資先を扱っています。例えば、投資信託はプロが運用する仕組みの金融商品で、分散投資が可能です。長期+分散で投資することでリスクを抑えた投資ができることが特徴です。
さらにNISA制度(少額投資非課税制度)を使えば、得られた利益は非課税となります。
FX
FXでは、為替差益とスワップポイントの2つの利益があります。どちらを狙うかで選ぶ通貨ペアは変わってくるでしょう。FXの場合も指値注文または、成行注文を選択して注文をします。
為替差益を狙う場合、初めての取引は取引量が多く、スプレッドの狭い通貨ペアを検討してみましょう。取引量の多い通貨ペアは比較的値動きが安定しており、スプレッドが狭いほど、利益を得やすくなるためです。
レバレッジをかける場合は低レバレッジから始めてみましょう。また、元手の資金は大きくなりますが、レバレッジなしでも取引は可能です。さらに損切りラインをあらかじめ決めておくことも必要です。
基本知識やマイルールが決まったらデモトレードで試してみるのも手です。FX会社は無料でデモトレードを提供しています。取引の感覚を養ってからリアルトレードに挑戦してみましょう。
FXと株を始めるために必要な手続きは?
これに関しては、どちらもさほど違いはありません。
サービスを取り扱っている会社で口座を開設し、入金することで取引が可能になります。口座開設のために必要な手続きも大きな違いはなく、本人確認書類やマイナンバー確認書類の提出が必要になります。
FXと株、初心者が始めるなら?
FXと株を初心者が始めるなら、どのような心持ちやスタイルで始めれば良いでしょうか。ここからは経験者の体験もふまえ解説します。
少額から始めたい方へ
投資に必要な資金は金融商品によって異なりますが、少額から始めたい方に少ない資金でも始められる仕組みやサービスをご紹介します。
FXを少額で始めるならレバレッジを効かせることで少額からでも取引が可能です。ただし、レバレッジを高くしすぎるとロスカットされやすいというのが少額投資の特徴です。 少額とはいっても3〜5万円の資金を用意し、5〜10倍のレバレッジで始めてみましょう。
編集部も実際に取引してみました。参考にしてみてください。
FXの少額取引はいくらから?5万円から実際に始めてわかった注意点やおすすめ口座
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株を少額で始めるなら単元未満株(1単元に満たない数の株式)を少しずつ買うという方法があります。通常100株から取引されますが、証券会社が購入した株を単元未満で販売しているのです。
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どちらも始めてみたいという方へ
エフプロ編集長:齋藤
この記事ではFXと株の違いについて解説してきましたが、当然ながら「どちらか一つしか選べない」わけではありません。「両方やる」というのもありですし、実際にFXと株の取引をしている投資家もたくさんいます。
たとえば、株については長期で保有し、FXはレバレッジを効かせてアクティブな短期トレードを繰り返す…といったイメージです(実際に私もそんな運用をしています)。
それぞれ、共通する部分もあれば性質の異なる部分もあるため、両方を経験することは投資家としての成長にもつながるのではないでしょうか。