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強制ロスカットの仕組み
強制ロスカットが発動するのは、「証拠金維持率」が、各FX会社で決められた水準を下回ったときです。
証拠金維持率は、FX口座の残高と現在の評価損益、および取引に最低限必要な証拠金額から算出されます。
これが50%を下回った場合、取引に必要な担保額がトレーダーの資金に割り込んでしまったことを意味します(%はFX会社によって異なる)。
急激な相場変動により証拠金以上の損失を出してしまう事態から、トレーダーとFX事業者双方を守るため、日本では2009年金融庁により、ロスカット・ルールの整備・遵守が義務付けられました。
とはいえロスカットは、含み損を強制的に決済する仕組みであるのも事実。
想定外のロスカットを防ぐために、証拠金に余裕を持って取引するようにしましょう。
⇒(一社)金融先物取引業協会「ロスカット・ルールの整備・遵守の義務付け」
ロスカットの発動条件となる「証拠金維持率」の算出方法
ロスカットの発動条件となる証拠金維持率(%)は、以下の計算式で算出できます。
証拠金維持率(%)の計算式
時価評価総額÷必要証拠金額×100
「時価評価総額」は、FX口座の残高+取引中の評価損益額の合計のことです。この額が大きいほど、証拠金維持率を高く保つことができます。
「必要証拠金額」は、取引を行うために最低限必要な金額です。
ロスカット発動のシミュレーション
ここでは、先ほどの計算式を使って、実際にロスカットの計算をしてみます。
5万円の証拠金で、100万円分のドルを1ドル=100円のときに買ったとします。
保有しているドルは1万ドルですから、1ドル=99円の円高に動くと1万円分の損失です。
ここで口座の証拠金残高+評価損益額(5万円-1万円=4万円)が必要証拠金の4万円と同額になるため、証拠金維持率は100%となります。
FX会社のロスカットラインが「証拠金維持率100%」であった場合、この時点で強制ロスカット、資金1万円を失います(※)。
上の事態は、口座に証拠金をもっと多く入れていたなら(あるいは取引する額を少なくしていたら)防げた事態です。
口座残高に余裕がないと、少しの相場変動にも耐えられず、強制ロスカットの憂き目に遭うことになります。
ロスカットを防ぐには、残高に余裕をもたせ、証拠金維持率を高く保持することが必要です。
※ただしFX会社によっては、1ドル=99円になると必要証拠金額も99万×4%=39,600円に更新され、上の条件では損失額10,400円までならロスカットを免れる場合もあります。
各FX会社のロスカットシミュレーション(証拠金シミュレーション)では、入金額(資産額)や取引金額、現在のレート等を入力すると、どのようにレートが動くとロスカットラインに到達するのか調べることができるので、取引の際は活用してください。
具体的にロスカットシミュレーションをしてみましょう。今回はGMOクリック証券を例に解説いたします。
口座に10万円を入金し、ドル円が105円のときに1万通貨の買いを持った場合、レバレッジは10.5倍となります。そして、追加証拠金(マージンコール)が98.958円で発生し、96.938円で強制ロスカットとなります。
このようにトレードをする場合に、事前に取引が破綻するレートは確認できます。特にスワップポイント運用など、同じポジションを長く持ち続ける場合には、事前に強制撤退となる水準は必ず把握するべきです。
それ以外にもロスカットのシミュレーションが行える口座をいくつか紹介しておきます。
FX会社12社別ロスカットラインまとめ
ロスカットのラインはFX会社によって異なりますので自身が選択したFX会社のロスカットラインを把握しておきましょう。
FX会社 | ロスカット基準 (証拠金維持率) |
詳細 |
---|---|---|
100%以下 | 詳細 | |
100%以下 | 詳細 | |
100%以下 (L25、L25miniは20%以下) |
詳細 | |
80%以下 | 詳細 | |
80%以下 | 詳細 | |
75%以下 | 詳細 | |
60%以下 | 詳細 | |
50%以下 | 詳細 | |
50%以下 | 詳細 | |
50%以下 | 詳細 | |
50%以下 | 詳細 | |
40%以下 | 詳細 |
強制ロストカットが間に合わない急変動で、口座入金額以上の損失になる可能性がある!?
強制ロスカットは、含み損が拡大して、このままでは口座に入金されている以上の損失を投資家が被る可能性があるとき、そうなる前にポジションを強制的に決済して投資家の資金を守る仕組みです。
しかし、ごく短時間で爆発的な値動きが発生すると、強制ロスカットが間に合わず、口座入金額以上の損失が発生する可能性があります。
なぜ強制ロスカットが間に合わないことがあるのか
FXの取引は、買いたいときには売りたい人が、売りたいときには買いたい人がいなければ成り立ちません。外国為替市場は規模が大きく、参加者も非常に多いため、普段の相場で取引が成り立たないことはまずありませんが、●●ショックのような相場の急変同時にはこの限りではありません。
1分間で数百pipsも動くようなショック相場では、市場に出ている注文が買い、あるいは売りのどちらかだけになってしまい、注文をしようにもそれが通らないことがあります。
こういった相場になると、あらかじめ決められている強制ロスカットの水準でもポジションがクローズされず、より悪い価格で損切りされることになります。
こういった理由から、急激に相場が動いた時には、口座入金額以上に損失額が拡大してしまう可能性があります。
つまり「FX会社側が強制ロスカットをしてくれるから安全」ではありません。
対処法として、自身でもこまめに損切りを入れたり、ロスカットアラート(後述)がかかったら対応したり、FX会社等の提供する為替ニュースに気をつけたりして、リスクヘッジをするようにしましょう。
資産がマイナスになってしまったら不足分を払わなくてはならない
自分のFX口座の資産がマイナスになった場合、このマイナス分を「不足金」といいます。
この「不足金」はいわゆる投資家がFX会社に借金をしている状態です。追加で資産に不足分を入れて補わなければいけません。
支払い請求を拒むと法的措置をとられたり、裁判になったりするケースもありますので、必ず支払いましょう。
強制ロスカットされないための予防策
ここからは、ロスカットされないための対策を紹介します。
ロスカットを防ぐには、口座残高を増やして証拠金維持率を高める、ロスカットが起こる前に自分で損切りする、などの方法が有効です。
損切りとは
損切りとは、取引で出た損失を決済して確定させることです。
では、ロスカットを防ぐ具体的な方法について解説します。
ロスカット対策1:レバレッジをかけすぎない
レバレッジ25倍、もしくはそれに近いハイレバレッジでトレードしていると(つまり取引に必要な証拠金額ギリギリの状態)、為替が少し損失方向に動いただけでロスカットされてしまいます。
これを防ぐために、現在の取引金額と証拠金額でどのくらいのレート変動に耐えうるのか、ロスカットシミュレーター等を用いて把握しておくようにしましょう。
ロスカット対策2:こまめに損切りする
ロスカットラインに達する前に、損失傾向にある取引を自分で決済(損切り)することで、ロスカットを免れることができます。
とはいえ、損をすることがわかっているのに決済をするのは勇気がいります。
損切りせずにポジションを持ち続けることを「塩漬け」と呼ぶ用語があるように、FXでは多くの人が悩み、失敗するポイントです。
いつ損切りをすればいいのかわからない、という方は、大損しないために損切りのラインを決めておくことをおすすめします。
たとえば「資金の2%の含み損になったら決済する」など、資金に対する損失の割合で決定する方法があります。
ロスカット対策3:ロスカットアラートが来たら、追加で入金するか損切りする
FX会社によっては、証拠金維持率損失がロスカットのラインに近づいた一定の時点で警告(ロスカットアラート)を出してくれるサービスがあります。
強制決済されないために、口座への追加証拠金(マージン)が必要ですよ、という警告なので、「マージンコール(追証、追加証拠金制度)」とも呼ばれます(追加証拠金制度のあるFX会社の場合)。
こうしたアラートをひとつの目安に、追加入金や損切りを行うこともロスカットを避けるのに役立つ手法です。
ロスカットアラートは通常メールで来るため、設定するアドレスは自分が頻繁に確認できるものにしておきましょう。
アラートメールは1日に1回しか来ないところがありますので、対処した後にも油断は禁物です。
この記事のまとめ
- 強制ロスカットは証拠金以上の損失を防ぐために備わっている機能
- ロスカットは証拠金維持率が一定水準以下になると発動される
- 強制ロスカットされると、資金を失ってしまうリスクがある
- ロスカットを防ぐためには
- 証拠金残高に余裕をもたせておく
- 自分でこまめに損切りをする
- スリッページによって、強制ロスカット発動が遅れて追証が発生する可能性もある