レバレッジとは
レバレッジ(leverage)は、もともと「てこの原理」の意味で、弱い力で重いものを動かす仕組みです。
ここから転じて、FXのレバレッジは、口座に入っている資金(証拠金と呼びます)以上の金額を取引できる仕組みを指します。
既に述べた通り、レバレッジは最大で25倍までと定められています(※個人口座の場合)。これは金融商品取引業等に関する内閣府令により、取引額の4%以上の証拠金を入金することが定められているからです。
よって、繰り返しますが口座に4万円を入金した場合、証拠金の25倍となる100万円までの金額で取引可能となるわけです。
なぜレバレッジという制度が可能かというと、FX取引とは、売買した通貨の受け渡しはせず、相場の上下によって出た損益のみを受け取る「差金決済」の取引だからです。
これにより、取引額を用意しなくても取引が可能になっています。
そして、投資家の資金は、為替の値動きによって生じた利益(もしくは損失)が反映されます。
レバレッジを上手に活用するポイント
レバレッジは仕組みであり、トレードを有利にするものではない
ここまで見てきた通り、レバレッジは資金よりもたくさんのポジションを保有できる仕組みです。よってレバレッジ自体に、トレードを有利にする効用はありません。ハイレバレッジでトレードをしても、勝率や利益率が上がったり下がったりするわけではないのです。
レバレッジをかけてトレードをすることで、取引ごとの利益も損失も大きくなります。ということは、トレード技術が高く、自分の勝ちパターンを構築している方ならレバレッジは有利に働きますし、発展途上のトレーダーならより多くの損失を負う可能性があります。
金融庁無登録の海外FX業者の中には、国内業者では不可能な数百倍の高いレバレッジをかけられるところもありますが、このこと自体がトレードを有利にするわけではないことを覚えておきましょう。
「高いレバレッジをかけられる=少ない資金でたくさんのポジションをまとめて保有できる」というだけのことで、相場が読めるようになったり、勝率がアップするわけではないのです。
レバレッジは自動で決まるもので、自分で数値設定はしない
レバレッジの倍率は、トレードにおける証拠金と保有ポジション数、通貨ペアの価格によって計算されるものです。「今日はレバレッジ15倍でトレードをしよう」というように、投資家が主体的に決定するものではありません。
適切なレバレッジはトレードスタイルによって違ってくる
逆に年単位でスワップポイントを狙うような長期戦略では、できるだけレバレッジをかけずに少ないポジションで運用することがセオリーです。長くポジションを持つほど、相場が逆行して含み損が増える可能性が高まるため、ポジションを少なくすることでそれに耐える必要があります。
ただポジションを持ち続けるだけで収益が見込めるスワップポイント狙いのトレードの場合、損切りにならないことが最重要課題であるため、レバレッジは1~2倍程度かそれ未満が適正とされています。
ハイレバレッジほどリスクが高くなる理由
「ハイレバレッジほどハイリスク・ハイリターン」といわれることがありますが、これにはふたつの側面があります。
- 取引額を大きくする→損益が大きくなる
- 証拠金の割合を下げる→証拠金維持率が変動しやすくなる(ロスカットリスクが高まる)
たとえば次の表は、1ドル=100円で米ドルを買ったあと、相場が1ドル=99円に下落した場合の変化です。
証拠金 | 取引数量(額) | レバレッジ | 1ドル=99円の損失額 | 1ドル=99円の証拠金維持率 |
---|---|---|---|---|
10万円 | 1万ドル(100万円 | 10倍 | -1万円 | 227% |
10万円 | 1,000ドル(10万円 | 1倍 | -1,000円 | 2500% |
1万円 | 1,000ドル(10万円 | 10倍 | -1,000円 | 227% |
このように、レバレッジを高くしても、取引額が同じであれば返ってくる損益は変わりません。
為替レートの変動による損失を小さくするには、取引額を小さくすることが必要です。
一方で証拠金維持率(※次項で解説)は、レバレッジと直結します。
証拠金維持率は、ポジションを維持するのに必要な証拠金が口座にどれだけ残っているかを示す割合で、レバレッジとは反比例の関係です。
証拠金維持率が低下すると、強制決済(ロスカット)や追加証拠金を発生させるリスクが高まります。
「なんだかよくわからなくなってきた…」という人のために、ここまでの復習も兼ねて、レバレッジの仕組みをイラストで例えてみました。
レバレッジを、上の図のように「てこの棒の長さ」だと思ってください。持ち上げるモノがトレードする通貨の量(つまりLot数)で、てこを操作する人の体重が、資金力(FX口座に入金する資金の量)です。
この人は、為替相場という名の「いつ崩れるかわからない崖の上」に立っているのですが、短い棒を使えば、崖っぷちからは離れることができます。てこの原理をあまり応用できないので体重も必要になりますが、証拠金維持率が高い状態をキープできるわけです。
体重が少ない場合は、てこの原理を最大限に応用すれば自分の体重よりも重いものを持ち上げることができますよね。
資金に余裕がなくても、長い棒(レバレッジ)を使うことで大きな取引をすることが可能になります。ただし、レバレッジを高くすればするほど「ガケっぷち」に近づくことになります。
レバレッジ最大(25倍)というのは、もう一歩も後ろに下がれないギリギリの状態。少しでも足下が崩れたら(相場が予想に反して逆行したら)、強制ロスカットになってしまいます。
「資金は多くない。でもガケっぷちには近づきたくない」。そんな場合はどうすればいいのでしょうか。
答えは簡単で、大きなモノを持ち上げようとしなければいいのです。資金に余裕がないのなら取引するLot数も少なくすることで、証拠金維持率に余裕を持つことができます。
レバレッジと証拠金維持率の関係、ロスカットのリスク
証拠金維持率とは、含み損益を加味した証拠金残高(有効証拠金)が、必要証拠金に占める割合です。
証拠金維持率 = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
(有効証拠金 = 資産合計額 + 評価損益額 - 出金依頼額)
この計算式で計算するとレバレッジ1倍のとき証拠金維持率は2,500%になり、レバレッジ25倍のとき証拠金維持率は100%です。
証拠金維持率が100%になると、各FX会社の基準により、ロスカットが執行されます。
FX会社によって基準は異なりますが、証拠金維持率が100%を下回るとロスカットを執行するルールになっている会社も数多くあります。つまりレバレッジ25倍は、エントリーした時点でロスカット寸前の状態ということ。
ロスカットが発動すると、保有していた全ポジションが決済されるので、抱えていた含み損も損失として確定します。
そしてロスカット基準が証拠金維持率100%未満の場合や、急激な相場の下落でロスカットが間に合わなかった場合、さらに証拠金不足が発生することもあります。
不足した証拠金は追加証拠金(追証:おいしょう)としてFX会社の口座に入金しなければならなくなるため、注意しましょう。
ロスカットや追証を防ぐには、レバレッジを低くし、証拠金維持率を高く保つことが必要です。
そのため口座には資金を多めに入れておき、多少の相場変動があっても必要証拠金を割り込むことがないよう調整しましょう。
レバレッジの確認方法とレバレッジコースの設定
レバレッジは、自分で倍率を設定できるわけではなく、入金した金額と通貨数量・レートをもとに事後的に算出されます。
FX会社の「実効レバレッジシミュレーション」や「証拠金シミュレーション」では、現在の為替レートを参考にレバレッジやロスカットラインが確認できるため、利用するとよいでしょう。
ロスカットのリスクを下げるには、証拠金の目安を取引額の20~100%程度(=レバレッジ1~5倍)に設定することです。
ポジションを保有したあとは、取引メニューの口座情報から現在のレバレッジ(実効レバレッジ、実質レバレッジ)が確認できます。
レバレッジは為替相場の値動きを反映してリアルタイムで変動するため、各FX会社のロスカット基準を確認しておきましょう。
ちなみにGMO外貨※など一部の会社では、25・10・5・3・1倍など倍率の上限を定めたレバレッジコースを選んで設定することもできます。
ただし低レバレッジコースは、通常のコースと同量の通貨を保有する場合、必要証拠金が多くなることには注意が必要です。
※YJFX!は2021年9月27日より、ヤフー株式会社の子会社からGMOフィナンシャルホールディングスの子会社になり、GMO外貨となりました