目次
自動売買とは?
読んで字のごとく、FXにおける売買を自動的に行うものが自動売買です。一般的に、FXの取引は以下のような流れで進行します。
- 相場の環境認識
- 新規にポジションを持つ
- 持ったポジションを決済する
裁量トレードの場合、相場の認識からポジションの保有・決済までのすべての取引を投資家自身が判断して行います。対して、自動売買の場合は、これらを投資家ではなくプログラムが自動的に実行してくれます。
裁量取引と自動売買取引の違い
裁量トレードは、もちろん全てを投資家本人が担います。これはイメージどおりだと思いますが、自動売買の部分を見て意外に感じる人も多いのではないでしょうか。
リピート系とプログラム系(後述)の違いはあるものの、自動売買においても投資家本人が決断、実行しなければいけないことはたくさんあるのです。
自動売買は、たしかに取引は自動化されていますが、自身でしなければいけないこともたくさんあると、まずは意識してみてください。
自動売買におけるプログラム・ツールの種類について
特にリピート系とプログラム系は、売買が自動である点以外はかなり性質の異なるものです。
今回はそれに加え、MT4(MetaTrader4)というソフトを用いて行う自動売買も比較対象に加えてみます。
リピート系 | プログラム系 | MT4のEA運用 | |
---|---|---|---|
始めやすさのハードル | 〇 | ◎ | △ |
売買ロジックの透明性 | ◎ | △ | △ |
最低限必要な資金 | △ | ◎ | ◎ |
必要経費 | 投資資金以外には不要 | 投資資金以外には不要 | EA購入費用、VPSの使用料が発生 |
ITスキルの必要度 | 不必要 | 不必要 | MT4のセットアップ、VPSの設定など、一定の知識は必要 |
選択できる投資戦略の種類 | △ | ◎ | ◎ |
取引コスト | △ | △ | ◎ |
資金力がある初心者向け!リピート系
リピート系とは、「相場の往復から利益を生み出す」タイプの自動売買で、元祖はマネースクエアのトラリピです。
上のイメージ図のように、設定範囲内を価格が行ったり来たりするたびに利益確定が発生します。
リピート系の運用では、これからの相場がどの水準を推移するかという見極めが必要です。 この相場観がある程度見えていないと、利益を出すことは難しいといえるでしょう。
というのも、リピート系は「この値幅分動いたら注文を入れる、利益を確定する」という売買ルールが事前にわかっているからです。
相場の予想と組み合わせることで、最大リスクも事前にわかります。
リピート系で一番難しいのは、おそらく資金管理でしょう。
等間隔に注文を敷き詰めるものなので、注文の密度が高いほど、あるいは注文あたりのロットが多いほど利益も多くなりますが、買い戦略なら下落、売り戦略なら上昇したときに含み損が拡大します。
口座がロスカットにならないためには、的確な値動きの予測ができるか、資金が豊富で一時的な含み損に耐えられるかのどちらかを満たしていなければいけません。
ただ、前者はプロでも難しいため、リピート系を安定して動かしながら満足できる利益を得続けるには、少なくとも数百万円の資金が必要といえるでしょう。
資金が少ないと、相場が逆行したときに口座が維持できなくなる可能性が増すか、あるいは注文がまばらで利益をあまり得られない状態になります。
逆に豊富な資金があれば、広大な範囲に注文をたくさん仕掛けられて、なおかつまず強制ロスカットにならない状態の運用をすることもできます。
マネジメント力が問われる!プログラム系
プログラム系の自動売買は、たくさんの種類がある売買戦略の中から自分が運用したいものを選んでポートフォリオを組み、運用することになります。
最大の特徴は、使っている側が売買戦略の中身を知ることができない点。
どういうロジックでトレードをしているか自体が商品なので、いわゆる企業秘密であるわけです。 よって、なぜ勝ったか、なぜ負けたかのちゃんとした理由はわかりません。
このあたりが、リピート系との一番の違いとなります。
売買は自動でやってくれますが、かといって放置していいかというとそうもいきません。
プログラム系の自動売買は、なんらかの分析によって環境認識をし、トレードのタイミングを計っているため、どうしてもそのときの相場と合う・合わないが出てきます。 つまり、「どんな相場でも安定して勝ち続けるプログラムはない」ということ。
よって、相場の展開と直近の売買成績を見ながら、調子の良いものを採用しつつ、調子の悪いものを休ませるといった、ポートフォリオ全体のマネジメント能力が問われます。
プログラム系の自動売買はまず間違いなく損切りもプログラムされているため、含み損をずっと抱え続けることはありません。 そのため10万円程度の資金でも、プログラムを動かしての自動売買運用が十分に可能です。
ランニングコストを安く済ませたい方向け!MT4のEA運用
MT4という世界的に普及しているトレードプラットフォームを活用すると、EA(Expert Advisor)という売買ロジックが記載されたファイルを用いて、本格的な自動売買が行えます。
EAの自動売買は、すでに紹介したプログラム系の自動売買と基本的には同じです。 にもかかわらず、EAの自動売買を行うためには、EAファイルを入手(基本的には有料で購入)、標準的なスペックのパソコンを用意するか有料のVPS(ネット上で動く仮想のパソコン環境)で、MT4を稼働させなければいけません。
これまで紹介した2種類の自動売買と比べると、明らかにハードルもコストも高いです。 それにもかかわらず、なぜEAの自動売買が支持されているのかというと、取引コストが一番安いからです。
リピート系、プログラム系ともに、毎回のトレードにスプレッド以外の取引手数料が上乗せされています(スプレッドに含まれているケースもあります)。
それに対してMT4の場合、スプレッド以外の手数料はありません。
これは、売買成績そのものがプラスになりやすいことを意味します。 トレードごとに発生する手数料が安いため、「口座全体で利益を出しやすい」のです。
また、コストが安いからこそ、数pipsを狙うような薄利のロジックも成り立ちやすくなります。
この恩恵が特に大きいのは、数十万、数百万ロット単位で取引する大口投資家の場合。
ロット数が大きいほど取引手数料も大きくなるため、一律であるEA代金、VPS料金などを支払うだけで取引コストの圧縮が可能です。
自動売買が使えるFX口座ランキングTOP3
マネースクエア【トラリピ】
マネースクエアの特徴
- 「トラリピ1クリック」ですぐに運用開始できる
- ニュースをはじめとする情報が豊富!
マネースクエアの「トラリピ」は、リピート系の元祖。その仕組みは非常にシンプルで、あらかじめ新規注文と決済注文を同時に発注し、ポジション決済後もそれをシステムでリピートしてくれます。
「トラリピ1クリック」という、マネースクエアのスタッフが導き出した設定を数ステップで設定してすぐに運用を開始できる機能があります。
さらに、口座を持っていると参照できる情報が豊富です。ファンダメンタルズ、テクニカルの情報の他、想定されるレンジの幅が毎週更新されているので、トラリピを仕掛ける際の参考になります。
上記は1クリックの画面です。あらかじめ用意されている運用設定で、すぐにトラリピを始められます。
インヴァスト証券【トライオートFX】
インヴァスト証券の特徴
- 自動売買だけで裁量取引もできる
- 売買ロジックから選ぶだけで取引を始められる
- 売買ロジックは自分に合わせて調整可能
インヴァスト証券の「トライオートFX」は、自動売買から裁量トレードまで幅広いトレードができることが特徴。
「自動売買セレクト」を使えば、複数用意されている売買ロジックから選ぶだけで自動売買を始められます。
売買ロジックは大きく3種類に分けられ、自分のスタイルに合わせた自動売買をすることが可能です。
- コアレンジャー:レンジ相場の運用向き
- スワッパー:高金利通貨の運用向き
- ハーフ:実質的に約半分の証拠金で運用できる
中級~上級者になれば、「ビルダー」を使ってゼロから自動売買のプログラムを構築することもできます。
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みんなのFX【みんなのシストレ】
みんなのFXの特徴
- 実口座で優秀な成績を残しているトレーダーのトレードをコピーできる!
- 1,000通貨からの少額取引が可能
みんなのFXの「みんなのシストレ」はたくさんある中から運用する戦略を選ぶタイプの自動売買です。
プログラム系の自動売買に加えて、トレイダーズ証券の実口座で優秀な成績を残しているトレーダーのトレードも、自動売買と同じように選択することができます。
また最低取引通貨量が1,000通貨となっているため、数万円程度の資金からでも始められます。
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FXを自動売買で取引をする3つのメリット
自動売買のメリットは以下の3つが挙げられます。自動売買の3つのメリット
- 24時間の値動き全てがチャンス
- 自動的に損切りされる
- プロの売買ロジックの再現性が高いこと
24時間の値動き全てがチャンスになる
平日ならほぼ24時間値動きが続いているのがFX相場ですが、自動売買は止めない限りはずっと売買をし続けるため、人間には必要な休息、睡眠によって取引チャンスが失われません。
特に顕著なのが、多くの方が寝ているであろう、日本時間未明から早朝にかけての時間帯。この時間帯は値動きに勢いがなく、強いトレンドが発生しにくいため、この時間帯独自の値動きを狙った「朝スキャ」とも呼ばれるジャンルがあり、その中には好成績を残している自動売買も存在します。
自動で損切りされる
ほとんど全ての自動売買には損切りの機能があるため、「計画的な損切り」が自動的に実行されます。
適切な損切りができないことは、FXで利益を出せない主要因の一つ。この問題が最初からクリアされているのが自動売買なのです。
プロの売買ロジックの再現性が高い
自動売買はプログラムが動いてさえいれば、原則的には誰がやっても同じ結果になります。
つまり、自動売買でプロが開発したロジックと同じように自分の口座で再現可能ということです。
FXを自動売買で取引をするデメリットと注意点
これまでメリットを中心に説明してきましたが、自動売買も決して万能な訳ではありません。ここからは自動売買のデメリット3つを解説していきます。
自動売買におけるデメリット
- 不測の事態への対応が苦手
- リスクに備えた資金管理が重要であること
- 自動売買ソフトにおける詐欺ソフトの流通
不測の事態への対応が苦手
自動売買の取引は、基本的にテクニカル分析のみで行われます。チャートによる値動きの分析、インジケーターの数値などから有利なタイミングを見計らってトレードをしますが、ここにファンダメンタルズ的要因は入っていません。
そのため、突発的なファンダメンタルズ的条件により相場が急激に動くと、それについていけないケースが多くあります。例として、海外の要人が重要な発言をして、瞬時に急騰や急落した場合などは、売買条件が狂って平常時のパフォーマンスを発揮できない可能性があります。
リスクに備えた資金管理が必要
自動売買では裁量トレードと同様に資金管理も大切です。
裁量トレードの資金管理は、トレード1回あたりの損失を小さくし、複数回の取引全体でトータルの勝利を目指すのがセオリーです。
損小利大(=損失を小さく、利益を大きく)、○%ルール(=取引一度の損失を資金全体の○%にとどめる)といった考え方は、そのセオリーに基づくものです。
それに対して自動売買は、決済の判断を自分でするわけではないので、トレード全体が悪い結果になったとき、どれくらい負けるかという予想を立てます。そしてその悪いパターンで失うお金が、資金全体に占める割合を考慮します。
また自動売買は元本や利益を保証するものではなく、裁量取引同様、相場変動等により損失が生じる場合があります。
特に自動売買は急な相場変動に対応できないケースがありますので注意が必要です。
自動売買ソフトにおける詐欺ソフトの流通
自動売買ソフトの中には高利回りを謳った、詐欺に該当する商品が市場に出回ることがあります。
2020年度にも2億円を超える額の詐欺を行っていた男女6名が逮捕された事件がありました。
自動売買ソフトをご購入の際は、購入先やソフトの内容に十分確認した上で購入するようにしてください。
自動売買に関するQ&A
MT4対応口座は複数ありますが、代表的な国内口座を以下に紹介します。
アヴァトレード
EZインベスト証券
FXトレード・フィナンシャル(ゴールデンウェイ・ジャパン)
OANDA JAPAN
外為ファイネスト
サクソバンク証券
楽天証券
リピート系が使えるFX口座は以下の通りです。
マネースクエア(トラリピ)
アイネット証券、ひまわり証券(ループイフダン)
外為オンライン(iサイクル注文)
FXブロードネット(トラッキングトレード)
インヴァスト証券(トライオートFX)
マネックス証券(オートレール)
リピート系はどのように運用するの?
リピート系の基本は、どのレンジを狙って仕掛けるかですが、狙うレンジの値幅によって時間軸が変化します。
長期的な広いレンジで運用する場合
月足で5~20年ほどのレンジを見定め、その範囲内にイフダン注文を設定します。超長期的な広いレンジを狙うため、レンジアウトする可能性は低く、ロスカットになりにくい運用です。ただし広範囲に仕掛けるためたくさんの資金が必要となり、なおかつ資金あたりのリターンは少なくなります。
上のチャート画像は、典型的なレンジ通貨ペアである豪ドル円の2006年からの月足です。全体として方向感がなく、同じ水準が何年にも渡ってサポートやレジスタンスになっていることが分かります。
短期的なレンジを狙う場合
日足程度で数か月~1年ほどのレンジを見定める運用です。短期的な狭いレンジを狙うため、相場の展開によってはレンジアウトする可能性があり、場合によっては損切りをする必要が出てきます。その分必要な資金は少なく、資金効率を高めることができます。
チャートは画像は豪ドル円の日足です。期間が短くなると、数週間から数か月程度で、レンジが移動していることが分かります。