ロスカットってなんだろう
FXで重要な制度でありながら、多くの人がしっかり理解していないのが「ロスカット(強制決済)」です。
ロスカットとは、預けた証拠金以上の損失が発生するのを防ぐために、FX会社が強制的にポジションを決済することです。
なぜこのようなシステムがあるのか。まずはロスカットがない場合を考えてみましょう。
あなたが10万円を入金して、1ドル100円で1万ドルを買ったとします。ところが、翌日に75円へと大暴落してしまいました。
75円で慌てて決済すると損失は25円×1万で25万円。預けた証拠金の10万円がゼロになるばかりか、15万円の借金が残ってしまいます。
こうしたことが起こるようでは、安心してFXを取引できませんよね。そんな事態を防ぐための制度がロスカットです。
FX取引によって想定以上の損失を防ぐため、含み損が一定限度まで拡大したらロスカットにより強制的に取引を終了させる仕組みです。
どうなったらロスカットが実行されるのか
ロスカットされるかどうかは「証拠金維持率」が基準となります。
証拠金維持率(%)は、【時価評価総額÷必要証拠金額×100】で計算します。時価評価総額は、預けた証拠金に含み損益を加算したものです。
【例】ロスカットラインが100%の場合
10万円を入金し、現在1万円の含み損を抱えた状態なら、時価評価総額は9万円となります。
必要証拠金は、ポジションを維持するのに最低限必要な証拠金の金額で、「現在レート÷25×ポジション量」でおおよその数字を計算できます。1ドル100円で1万通貨を買っていたら必要証拠金は4万円です。
証拠金維持率は、含み損が拡大するとともに低下していきます。
「何%でロスカットが発動するか」はFX会社によって異なるのですが、多いのは100%か50%です。
先ほどの例のように「資金10万円・1ドル100円で1万通貨を買った」場合、94円まで下がったときの含み損は6万円。証拠金維持率は106%となります。
あと25銭ほど下がって93円75銭になると、ロスカット基準が証拠金維持率100%のFX会社ではロスカットとなります。
ロスカットが発動されても預けた証拠金が全額失われるわけではなく、今回の例だと3万7500円ほどが残ります。
※証拠金の算出方法やロスカット判定のタイミングがFX会社によって異なるため、詳細はご利用のFX会社で確認してください。
【例】ロスカットラインが50%の場合
証拠金維持率50%を基準とするFX会社だと、93円75銭ではまだロスカットされません。50%を下回るのは、91.80円です。
100%の場合よりも約2円、相場の逆行に耐える余裕があります。
ただしその分、ロスカット後に残る金額は少なくなり、1万8000円しか残りません。
ロスカットについての疑問や証拠金維持率が低下したときのくわしい対処法は、こちらの記事も参考にしてください。
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日本と海外ではロスカットラインが異なる
FXのことを調べた人は、日本ではできない高いレバレッジでの取引が可能な海外FXの存在をご存知かもしれません。
会社によって異なりますが、海外のFX会社は日本に比べてロスカット基準が低いケースが大半です。
中には「証拠金維持率0%」でロスカットとしている会社もあります。
証拠金維持率0%でのロスカットということは、ロスカットされたあとに口座に残る金額はほぼゼロです。
全額を失うどころか、相場の動き次第では、預けた証拠金以上の損失が発生する確率も少なくありません。
とくに高いレバレッジを活用し、大きなポジションを保有していた場合には、マイナスの残高が拡大するリスクが高まります。
こうした損失を発生させないため、海外FXではハイレバレッジともに「ゼロカット」が採用されていることがあります。
「ゼロカット」とは
海外FX会社に導入されている、預けた証拠金以上の損失が発生しない仕組み
日本でもゼロカットの採用を望む声はあるのですが、ゼロカットは「マイナス残高を帳消しにする」ことですから、利用者への利益供与といえます。
日本でFXを規制する金融商品取引法では特定の利用者に対する利益供与を禁じているため、ゼロカットの実現は難しいのが現実です。
ロスカットラインは低い方が良いのか
各FX会社はそれぞれ違うロスカットラインを設定しています。今回はロスカットラインが低い場合どんなメリット、デメリットがあるのか具体的な数字とともに考えてみましょう。
ロスカットラインが低いメリット
ロスカット基準が低いことはどんなメリットをもたらすでしょうか。
ロスカット基準となるのは証拠金維持率でした。日本だと100%が一般的でしたが、海外FXだと0%の場合もあります。
ロスカット基準が0%のメリットは、相場の瞬間的な変動があってもロスカットされにくくなることです。
下図のように、不利な方向へ瞬間的に動いたもののV字を描いて戻ってくるのはよくある値動きです。このとき、ロスカット基準が高めの会社だと、V字の底でロスカットされてしまうことがあります。
大底でロスカットされ、その直後にV字で戻ってくれば、「ロスカットされなければ損失はなかったのに……」と悔しい思いをするでしょう。
ロスカット基準が低い会社を利用していれば、発生しなかった損失です。
一言でいえば、短期的な相場の急変の影響を受けにくくなることが、ロスカット基準が低いことによるメリットと言えます。
ロスカットラインが低いデメリット
一方で、ロスカット基準が低いことによるデメリットは、「ロスカット後に残る金額が少なくなること」です。
先ほどは相場がV字回復した例でしたが、そのまま下げ続けることもあります。下図のような場合です。
このとき、証拠金維持率100%基準の会社でロスカットされると、口座には約8万円が残ります。証拠金維持率0%をロスカット基準とする会社だとロスカット後に残る金額はゼロです。
ロスカット基準が低いと、ロスカットされたときに確定する損失額が大きくなります。
ゼロカットの会社であれば残る金額はゼロですから、資産運用というよりはギャンブルに近くなってしまいます。
日本のFX口座のロスカットラインは40%以上
海外のFX会社に対しては日本の法律が適用されません。
そのため、何かトラブルが起きても自分の責任、行動で対応しなければなりません。信頼性の面でも会社ごとに大きく異なり、出金したいのにできないといった日本では考えられないようなトラブルもSNS上では散見されます。初心者は日本のFX会社の利用を心がけてください。
日本のFX会社の中でもロスカット基準はさまざまです。
一般的なのは証拠金維持率100%ですが、最大手のGMOクリック証券やDMM.com証券などは証拠金維持率50%となっています。
また中には50%より低いロスカット基準の会社もあります。マネーパートナーズは40%ですし、外為オンラインの「L25コース」は20%です。
ロスカットラインが高いメリット
ロスカット基準が何%のFX口座を使うのがいいのか、迷ってしまう人もいるでしょう。
ロスカットライン基準が証拠金維持率100%の場合、50%の場合、20%の場合で、それぞれの具体的な金額とともに考えてみましょう。
下図のように10万円を入金して2万ドルを買った場合、証拠金維持率20%でロスカットされると、口座には2万円も残りません。
しかし、100%でのロスカットならば口座には8万円弱残ります。
8万円からもとの10万円へと回復させるのはそう難しくはありませんが、2万円まで減ってしまうと10万円への回復は格段に難易度が上がります。
つまり、ロスカット基準が低い会社を使っている場合ほど、自ら損切りする判断が重要だということ。
FXを始めたばかりの頃ほど損切りは苦手ですから、「ロスカット基準が厳しい会社を利用することで損切りの遅れをカバーしてもらう」という発想もいいでしょう。
ロスカットラインが高いデメリット
ロスカット基準が厳しいことによるデメリットは、急激な価格変動時、ロスカットされやすくなることにあります。
レバレッジを高めて取引していると、「証拠金維持率100%を基準とするとロスカットされてしまうが、50%なら助かっていた」というケースもあるでしょう。
GMOクリック証券やDMM.com証券はロスカット基準が50%となっています。この2社はともにデイトレードやスキャルピングなど短期取引を好む投資家によく利用されるFX口座です。
デイトレードではレバレッジを高めて取引することが多いですから、それだけロスカットされるリスクが高まります。
そうしたリスクを避けるために、ロスカット基準が低めなこの2社が支持されている、と考えることもできます。
ロスカットと追加証拠金の関係
日本のFX会社ではロスカットされる前に「マージンコール」の仕組みが用意されている場合があります。
「マージンコール」とは
マージンとは証拠金、コールとは要求、「追加の証拠金を入れてください」との要求がマージンコールです。
証拠金維持率が低下してロスカットが近づくと、メールなどによりマージンコールが届きます。
ロスカットを避けるために追加で証拠金を入金してもいいですし、「ロスカットされれば仕方ない」と割り切ることもできます。
あるいは、自ら損切りしたり、ポジションの一部だけを決済したりして証拠金維持率を高めることもできます。
また、一部のFX口座では、指定期限までに追加の証拠金を入金しないと強制的にポジションが決済される場合もあります。
自分が利用するFX口座がどのような制度なのか、口座開設時に確認しておきましょう。
いずれにせよ、マージンコールが届くときにはポジションがピンチですから、現実から目を背けず戦略を立て直すことが最善策です。
ロスカットルールがあっても、資金以上の損失はあり得る?
いちばん最初に説明したようにロスカットの目的は、預けた証拠金以上の損失の発生を防ぐことにあります。
しかし、為替市場ではときとして想像を超えるような事態が起こります。
週末に出たニュースにより月曜日早朝の為替レートが前週終値から大きく乖離して始まることもありますし、2015年に起きた「スイスショック」では取引そのものができなくなりました。
スイスショックや週初の窓開けのように為替レートがワープすると、ロスカットされたときに証拠金以上の損失が発生することがあります。
96円でロスカットされるはずだったのに、為替レートが週末の間に97円から95円までワープしてしまった、といったケースで、FX会社に対して不足分の金額を入金しないといけなくなることもあります。
頻繁に起こることではありませんが、>決して「あり得ない話」ではありません。FXでは不可避のリスクとして頭にとどめておいてください。
FX会社12社のロスカットライン比較
最後に主な日本のFX口座について、ロスカット基準を比較しておきましょう。会社によって100%から20%まで、基準はさまざまです。
ここまでに説明したメリットやデメリットを勘案して、自分はロスカット基準が甘いほうがいいのか、厳しいほうがいいのかとイメージしてみましょう。
また、FX口座選びではロスカット基準以外にも重要なポイントがいくつかあります。
他の観点からもFX口座を比べてみたい人は、こちらのランキングも参考にしてください。
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記事のまとめ
- ロスカットとは、預けた証拠金以上の損失が発生するのを防ぐために、FX会社が強制的にポジションを決済すること。
- ロスカットされるかどうかは「証拠金維持率」が基準となる。
- 「何%でロスカットが発動するか」はFX会社によって異なる。
- 会社によって異なるが、海外のFX会社は日本に比べてロスカット基準が低いケースが大半。
- 「追加の証拠金を入れてください」との要求がマージンコール。
- マージンコールが届くときにはポジションがピンチなので、現実から目を背けず戦略を立て直すことが最善策。
- ロスカットルールがあっても資金以上の損失はあり得る。