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株式取引の場合は朝9時から11時半、12時半から15時までの間に取引が行われますが、外国為替市場の場合は24時間ノンストップで取引可能であり、株式相場のような時間的な制限はありません。自己管理のもとに自分の好みのペース配分で無理のない取引ができます。
そんな中、FXではいかに売買シグナルを見出すかに苦慮すると思われますが、FX取引自体の売買材料は多様化していますので、必勝法は存在しないことも留意しなければなりません。
他の商品と同様に敗者もあれば勝者もいますが、相対的には株式相場や他の商品市場よりはリスクは限定的です。効果的に勝利の確率を高めるにはメリハリの効いた売買と同時に、ある程度の知識、そして、背伸びをしない戦略性が求められます。
今回ご紹介するペットでも判る簡単チャートは2つの通貨ペアの乖離幅から売買シグナルを見つけることが可能となり、主要8大通貨からオセアニア通貨裁定取引まで幅広く利用できます。
チャート分析の本質はシンプルイズベスト、複雑怪奇で理解不能な古いチャートはゴミ箱への勇気も大切です。一喜一憂せずに、FX取引をエンジョイしながら収益チャンスを逃がさないようにしましょう。
【第一章】1) 取引通貨の対象を絞る
世界の基軸通貨である米ドルを中心に対ユーロ、円、ポンド、豪ドル、NZドル、スイスフラン、カナダドルが挙げられます。そして、クロス円通貨はユーロ円、ポンド円、豪ドル円なども選択肢の一つとなります。
近来では高金利の新興国通貨(南アフリカ、トルコリラなど)人気が集まっています。ただ、通貨の流動性や変動幅の大きさなどのリスクもあり、ある程度の経験則を積んでから始動することをお勧めします。
2) リスク管理と自己管理の徹底
FX取引には投資金額の許容範囲を自ら知ることも大切です。レバレッジを有効活用しながら、投資金額の何倍もの額面で取引することが可能ですが、その反面リスクも同じ比率で拡大することも考慮しなければなりません。
要するに10万円の元金(証拠金)で百万円の取引をすることも可能ですが、損益分岐点を常に意識しながら売買戦略を構築することが大切です。そのためには取引ごとにストップロスの配置は必須条件となります。
また、現段階では各国の政策金利格差が接近しており、従来のような金利差(スワップ狙い)によるキャリートレードの妙味はほぼ半減しています。しかし基本的には各国の金利差がリスクの軽減にも繋がりますので、ときにはスワップポイント狙いの取引も視野に入れましょう。
余談になりますが、FX取引が本格的に開始されるまでは外貨預金が主流でした。私自身も豪ドルやNZドル預金を利用しましたが、1豪ドル70円程度で買った後に60円割れまで下落するなど苦い経験があります。
ただ、外貨預金が10%台で推移していたため、為替自体の損失額は相殺され、損失額はゼロになった記憶があります。
3) 運用利回りを重視
投資家心理としては、投資金額を短期に2倍3倍にしたいのが本音です。以前セミナーで運用利回りのアンケートを取った結果、驚くことにセミナーの参加者のほとんどが投資金額の50%程度の利回りを期待していました。
レバレッジのかけすぎが錯覚現象を起こしたのかもしれませんが、これは競馬や競輪などのギャンブル症候群の発想に近く、最終的には墓穴も掘りかねませんので、現実的な運用利回りを目指すことが賢明です。
仮に、10万円の証拠金にレバレッジ10倍をかけると100万円分の資金を取引することが可能です。要は約千ドルの限られた資金で1万ドル単位の取引ができますが、初期投資が10万円なのですから、運用益としては10%(1万円)もあれば十分満足できる結果と言えるでしょう。
4) 間違いだらけの投資哲学
FX取引は銀行間で行われるインターバンク取引が主流ですが、専門家(ディーラー)は職業柄24時間、為替変動を見張る必要があり、取引額も数百万ドル単位が通常取引となります。それゆえに利食いや損切りも素早く、長くポジションを取る傾向は少なく、主にデイトレード的な発想が主流です。
基本的にはリスク管理が徹底されており、一発勝負的な戦術はとらず、悪く言えば地道な売買に徹しているのが現状です。
いずれにしても、FX取引は一攫千金の投資手段ではありません。一般投資家は、まずは経験則を高めることも重要で、同時に常に余裕を持った資金で臨む必要があります。
そして、売買の判断基準が判らないとき、負け込んだときはプロでもジレンマ状態に陥るものです。その際には積極的に休み、リラックスした状態で参加することが必要です。
ファンダメンタル分析は各国の政策金利、経済力、そして、株式動向などさまざまな要因が売買材料の参考になりますが、突発的に起こるテロや地政学的リスクには、いずれの分析も機能不全になります。
株式市場ではさまざまなチャート分析が有効活用されていますが、チャート分析の本質は「歴史は繰り返される」という認識から生まれたものです。テクニカル分析の種類は多岐に渡り、それぞれの特徴がありますが、基本的には値動きのトレンドを見るトレンド系と、買われすぎ売られすぎを判断するオシレータ系に分かれています。
ただ、金融機関の為替ディーラーでもチャート分析に依存することは少数派であり、実際には顧客注文や投機筋の売買に沿った業務に費やしているのが実状です。チャート分析のノウハウを全部掌握できても、実際に為替に勝てる保証は全くありません。
また、FX業者が推奨している自動売買に依存することもできますが、何も努力しないで運用できる手法であれば為替ディーラーは必要なく、また敗者も存在しないでしょう。ただ、売買手法を学ぶために試してみるのもいいのではないでしょうか。
5) 投資家心理の脆弱性を知る!
損切りには美学はありませんが、損失額を極力抑えるためには損切りの達人になりましょう。
ちなみに「損切りは早く、利食いは遅く」が原則ですが、実際には損切りは遅く、そして、利食いは早くなりがちになるため、思わぬ含み損を抱える傾向があります。
それゆえに、ポジションを取った際にはストップロスの配置を重視し、大きな損失を回避する手段が求められます。
特に、市場参加者が陥りやすいFXシンドローム(症候群)は売買戦略の欠如、無謀な投資金額、そして投資家心理の脆弱性などが起因しています。
株式市場ではマーケットが過熱状態になった際には、自動的に値幅制限などにより、取引が中断されます。
ただ、FX取引に関しては、自分自身でストップロスを配置しない場合には、FX業者が各社のルールに照らし合わせてロスカットを実施します。自分自身で納得した損失額で収まれば良いのですが、損失を取り戻すためにロット数を倍にしてトレードするなど、ギャンブル的な発想に陥ることもあるので注意が必要です。基本的にはパニックにならないためにも余裕を持った資金力が売買戦略の効果を高めることになります。
6) 投資戦略シナリオには起承転結!分散型投資術
為替は各国との貿易バランスを均衡化するためのツールであり、基本的にはボックス圏相場の範囲内で売り買いが行われる確率が高いものです。
チャート分析上ではサポートライン(下値支持線)とレジスタンスライン(上値抵抗線)が介在し、チャート分析の基盤になっています。
為替トレーダーはこの2つのラインを意識しながら、売買戦略を練ることに始まりますが、常に相場を追いかけることが不可能な人には、専門家のようなデイトレード的な発想は不向きです。
チャート分析は時系列の長さ次第で変貌しますので、過去のデータに囚われる必要はありませんが、チャートには、上昇トレンド並びに下降トレンドの転換期(ヒント)がいくつも隠されています。
株式市場では順張りが最も安全と見なされていますが、為替市場ではむしろ逆張り手法の方が容易に売買シグナルを発見できます。
ただ、常に損失が発生する相場でもあり、ナンピン売買を取り入れる事も勝率を高める手段です。
直近のボックス相場の中で起承転結を描きながら、分散型投資で意図的にリスクを軽減させることも大切な要素です。
7)IMM通貨先物市場(投機筋)
IMMポジションとはシカゴ・マーカンタイル取引所の国際通貨先物市場に上場されている通貨の建玉明細のことです。
各取引所は実需ベースではなくいわゆる投機的とみなされる通貨取引の建て玉推移を1週間刻みで公表しており、相場の先行きを予測する指標として世界中の投資家が注目しています。
例えば、円の買い建玉が 60,000枚で、円の売り建玉が50,000枚とすると、円ロング10,000枚となります。
円のポジションがロングに偏っていると把握できます。通貨先物の1契約単位(枚数)で示されており、JPY:1,250万円、EUR:125,000ユーロ、GBP:62,500ポンド、AUD:100,000豪ドル、CHF:125,000スイスフラン、NZD:100,000NZドル、CAD:100,000カナダドルでそれぞれ換算する必要があります。
多くの市場参加者はこの数字を元に、投機筋の相場観がどちらに傾いているか判断材料とします。
重要なのはポジションの偏りが大きく膨らむと、ポジションの手仕舞いが視野に入りますので、その時点で投機筋の売買志向が強気(手仕舞)なのか弱気(様子見)なのを判断する材料にもなっており、視覚的にイメージしやすい指標と言えるでしょう。
【第二章】1) 2つの通貨ペアの乖離幅と相関性
通常のテクニカル分析とは、相場の分析において過去の値動きから将来の値動きを予想することになりますが、値動きの推移をグラフ化したチャートを用いて、さまざまな過去のパターンを参考に売買の判断基準として使用します。
ドル円の場合では過去10年の間のレンジ幅は80~120円と大きいですが、過去3年間では106~114円など、変動幅は縮小傾向にあります。
FX取引では1年先の相場を読み取ることは不可能ですので、基本的には直近のボックス圏相場の中で売買を模索することが効率的です。
為替レートの存在は各国の貿易不均衡を是正する手段ですので、それぞれに変動幅が大きく乖離したときが売買チャンスの訪れと言えるでしょう。
添付の通貨ペアのチャート分析から売買ポイントの強弱を模索しますが、ドル円相場はユーロ円とユーロドルの組み合わせから売買戦略を見出します。
そして、ユーロドルはユーロ円とドル円のチャート、他の主要通貨も下記の組み合わせで売買シグナルを模索します。
他の通貨も同様に下記の通貨ペアから売買の強弱を見出すことが可能となります。
- 豪ドル編(ドル円―豪ドル円)
- ニュージランドドル編(ドル円―ニュージランド円)
- カナダドル編(ドル円-カナダ円)
- ポンド編(ドル円-ポンド円)
- スイスフラン編(ドル円-スイス円)
- オセアニア通貨の裁定取引
2) チャートの活用方法(通貨ペアの乖離幅で売買タイミングを探る)
下記のチャートはユーロドルとユーロ円チャートを単に重ねた図式です。
その乖離幅が拡大した時点でドル円相場の売買シグナルが点灯し、強めのシグナルが発生した場合が売買チャンスとなります。
ドル円相場
上記のA.B地点では乖離幅が拡大しており、強めのユーロ円売り(ユーロ売り/円買い)とユーロ$買い(ユーロ買い/米ドル売り)が発生しており、ユーロを相殺する格好でドル円の売りシグナルが点灯しています。
逆にC地点ではユーロ円買いとユーロ$売が発生しており、ドル円の買いシグナルが点灯しています。
ラインが交錯している地点はポジション解消売買を示しています。
また、利益確定は直近の乖離幅の中間点で図ることになりますが、現時点ではドル円106.65円で弱めの買いシグナルが点灯しており、利益確定売りはドル円107.30円を表しています。
ユーロドル相場
次の構図はユーロ円とドル円を重ねただけのユーロドルの売買シグナルです。
他の主要通貨も同様に売買シグナルが発生しますので、添付の資料を参考にしてください。
そして、クロス円取引の売買シグナルに関しては、ドル円相場の強弱関係を見ながら売買を模索することになります。
例えば、ドル円に買いシグナル(米ドル買い/円売り)が点灯し、同時に豪ドルにも買いシグナル(米ドル売り/豪ドル買い)が点灯した場合には、豪ドル円に強めの買いシグナルが点灯していると判断することが可能です。
注意点
これまで列記したチャートは3か月を基準にしたチャート分析ですが、さらに正確性を高めるためには6か月チャートの作成も考慮することも一案です。
ただ、世界経済がグローバル化しているため、為替相場の変動幅も少なくなっている関係上、過去の経緯に固執せずに直近のボックス圏相場の中で売買戦略を見出すことが得策とも言えるでしょう。
上記チャートは毎週月曜日に鈴木郁雄の”実践・為替ストラテジー”からのPDF資料からも閲覧可能です。
尚、最終のご判断は自己責任にてお願いいたします。