FX初心者に知っておいてほしいこと
利益を上げるのは簡単ではない
FX取引は小額から始めることができる、とても魅力的な金融商品です。しかし、何も準備せずに適当に取引して利益があげられるというものではないので注意してください。
ネットや雑誌で、一つのチャートを見るだけで利益を得られる、というような記事をご覧になったことがあると思います。
また、有料のメールマガジンで、大口のファンドの売買手口などを配信しているものがあります。しかし、実際には、これらのものだけで利益をあげるのは難しいことなのです。
ただし、誰にでも利益をあげるチャンスがありますので、これから紹介しようと思います。
個人投資家は利益をあげられない?
FXで利益をあげるには、特別な才能や、知識がなくても、正しい知識と準備を行うことで多くの投資家にとって可能です。
しかしながら、個人投資家で、FXで継続的に利益を上げている人は非常に少なく、口座を開設した人のうち10%程度と言われています。
なぜほとんどの人は利益をあげられないのでしょうか?
利益をあげられない理由
利益をあげられずにFX取引をあきらめてしまう多くの人達には、共通した問題点があります。それは準備不足です。
スポーツでも仕事でも、何か新しいことを始めるときには、普通いろいろ準備をすると思います。
しかしなぜかFX取引を始める多くの人たちが、準備らしい準備もしないまま取引を始めてしまいます。
ネットなどで見た取引手法をそのままやってみたり、あるいは“専門家”と称する人達のコメントを鵜呑みにしてポジションを持ったりした結果、想定外の損失を被ってFXを諦めてしまいます。
今年、まさにそんな理由で多くの投資家が大きな損失を被りました。
正しい準備を怠ったゆえの失敗例
トルコ・リラ/円などで高金利通貨の買いポジション(ロング)を持って金利差相当分のスワップ・ポイントを受け取れば、簡単に利益を上げられるなどと書いたブログなどを読んで、適切な準備をせずに取引をして大きな損失を被った投資家が続出しました。
原因はトルコ・リラ/円が下がったことではなく、値動きを考えずに闇雲に買いポジションを持って、しかもリスクを過小評価したことです。
もちろん、適切な取引をしていれば利益を出すこともできましたし、万が一損失を被ったとしても小さい金額に留めることはできたはずです。
正しい準備をせずに取引を始めることは、決して良い結果には結びつきません。
利益をあげるための準備
FXを始める上で大切なことは、相場の予想をすることではなく、為替レートの変動を利用して利益をあげる方法を準備することです。
リスクをコントロールしながら、少しでも多くの利益をあげようとするための戦略=“取引ルール”を用意することが特に重要です。
為替レートの変動を利用して利益をあげようとするとき、避けて通れないのがリスクの問題です。リスクを取らなければ利益をあげることはできません。しかしリスクをコントロールできないと、最終的には大きな損失につながります。
この取引ルールを作っていくことがFX取引で成功するための大切な準備なのです。
FXを始めた方は為替レートが動く理由、つまりファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)や、各国の経済情勢、政治情勢などに詳しくなることがFX取引をするための準備と考えがちです。
しかしそれは、無駄とは言いませんが、直接利益に結びつくものではありません。
どうして動いたのかは、今後の相場を予想する上では参考になるものではありますが、ファンダメンタルズなど相場への影響は非常に不安定なもので、予想することも難しく、それを利用してFX取引で利益をあげることはプロにとっても困難なものです。
自分の取引ルール
取引ルールを作ると言われても、どうすれば良いかわからないと思います。具体的な例は後で紹介しますが、まずは取引ルールに対する考え方を紹介します。
- どんな時にどんなポジションを作るのか
- ポジションをどうなったら利食い、あるいは損切りするのか
- どのくらいのリスクを取るのか
【決めておきたい3つの自分の取引ルール】
最初はとても単純なルールで良いと思います。ただ、自分でこれなら利益を残せそうだな、と納得できるルールでなければいけません。
さらにルールは主観的なものではなく、客観的な根拠に基づいたものでなければいけません。
客観的な根拠に基づいたルールなら、たとえ上手く行かなくても、上手く行かなかった理由もわかりますし、改良することもできます。
すでに取引して利益をあげている投資家の取引ルールを参考にすることも有効です。
しかし、人それぞれ資金の状況やライフ・スタイル、そして性格も違うため、ある人にとって有効な取引ルールがあなたにとってかならずしも有効ではない、ということは覚えておいてください。
そのルールを自分の状況に合わせて調整する必要があります。100人の投資家には100通りの取引ルールがあるのです。それでも、成功している投資家のルールはあなた自身のルールを作る上で参考になります。
テクニカル分析を利用する
取引ルールで大切なこと
それでは、初めてFXに挑戦する個人投資家は、どんなルールを使って取引をすればいいのでしょうか。大切なことが3つあります。
- 客観的であること(恣意的な解釈の余地が小さいこと)
- シンプルであること
- 無理なく実行できること
【重要な3つの取引ルール】
実際に取引をしてポジションを持つと、そのポジションが含み益を生んでも含み損を抱えても、必ず心理的なプレッシャーを感じます。
含み益ができると早く利益を確定したくなりますし、含み損を抱えたときには、なるべくその損を実現したくない、という気持ちになります。
その気持ちのままに取引を繰り返すと、小さな利益と大きな損失の組み合わせとなって、最終的には損失が残ります。
そうならないために、不安定な心理状態の中でも正しい行動が取れるよう取引ルールを準備することが必要なのです。
したがって取引ルールは客観的なものである必要があります。また過度に複雑なルールは、せっかく作っても守ることが難しくなります。
さらに、自分の性格やライフ・スタイル、取引に使える時間なども考えて、そのルールを実行することが可能なのか、ということも検討しなければなりません。
たとえば、どんなに有効な取引ルールであっても、夜間ずっとPCの前に張り付いていなければいけないような取引戦略を本業のある個人投資家が実行できるはずはありません。
またすぐに結果を求めたい人には、長期のトレンドをとるような戦略は向かないでしょう。
テクニカル分析とは?
為替レートの動きに隠された法則や癖を過去の値動きから探し出して、それを利用して今後の値動きを探るのがテクニカル分析と呼ばれる手法です。
テクニカル分析には多様な分析方法がありますが、ここではチャートと呼ばれる、それまでの為替レートの動きを一種のグラフに描いたものを利用するチャート分析の利用を紹介していきます。
テクニカル分析は一般的に客観的なものです。したがってさきほど紹介した取引ルールで大切なことに当てはまります。
また基本的なテクニカル分析を利用した取引はそれほど複雑なものではありません。
さらに週足、日足、時間足、分足といったように、使うチャートの足(一つの線などの表す期間)の長さを変えることで、短期の取引にも、長期の取引にも利用できるので、この面でもさきほどの条件に当てはまります。
テクニカル分析には多種多様な手法がありますが、あまりいろいろ見すぎると結論にたどり着けなくなってしまいます。
自分の投資スタンスや、資金量、性格、どのくらいの時間をFXにかけられるのか、といった要因を考慮した上で、自分の好みにあった手法を最終的にいくつか選ぶことが大切です。
プロの投資家や、大きな利益をあげている個人投資家は、その経験を通じて、為替レートの動きには一種の法則、規則性、あるいは癖のようなものがあることを知っています。これらの規則性のようなものを利用して利益をあげているのです。
初心者でも使える取引ルール
ここからはテクニカル分析を利用した取引ルールを紹介したいと思います。
ただし繰り返しになりますが、紹介したルールで取引したからと言って利益が出るというものではありません。具体的なルールを見ることで、それを参考にして自分のルールを作る助けにしてください。
ブレイク・アウト・ルール
このルールは、有名なシカゴの先物市場で、フロア・トレーダーと呼ばれる主に短期売買を行うプロ中のプロが長年使ってきた取引手法です。また銀行の為替ディーラーなども、特に意識しなくても自然に同じような取引をしています。
- ある一定の期間の取引レンジの高値を上抜いたら買いポジションを作り、反対に安値を下回ったら売りポジションを作る
- ポジションを作ったあとは、上抜いた高値を再び割り込んだり、割り込んだ安値を回復したりした場合には(多少の余裕を見ますが)損切りをする
【ルール】
ブレイクアウトルールを利用して利幅を得られる例
この一定の期間の取引レンジというのは、一番わかりやすいものは前日の取引レンジや過去1週間の取引レンジが考えられます。またもう少し短期のものでは、当日のそれまでの高値、安値を利用できます。
もっと短いものなら、直近の一時間のレンジを使うことも可能でしょう。
どんな時間軸を使うかは、どのくらいポジションの時間を持っているか、取引のチャンスがどのくらい多いかなどに影響します。
この取引ルールのメリットは、単純でわかりやすく、損切りの幅がそれほど大きくならないことです。一方デメリットは利益を出しにくいことです。
いかにも単純なルールですが、取引レンジが拡大するというのは、それまでとは違った圧力が市場に働いているという意味で重要なことです。
単純なルールですが、上抜いた、割り込んだというのを何ポイントで判断するのか、利食いの基準をどう設定するか、損切るときに上抜いた高値、割り込んだ安値から何ポイントで損切るのか、など細かい点は工夫の余地があります。
生き馬の目を抜くシカゴ先物取引所の長い歴史の中で生き抜いてきた取引ルールですので、利益は出しにくい一方で、利益を得られる時には非常に大きな利益を生むこともあります。トータルでは利益をあげることを期待できるルールです。
MACDを使ったルール
次紹介するのはいわゆるテクニカル指標と呼ばれるMACDを使った取引ルールです。
MACDは、多く利用されているテクニカル指標である移動平均線を、より洗練して使いやすい物にしようとして開発されたテクニカル指標です。
MACDのチャートには、2本のラインが描かれています。(それに加えて2本の線の差をヒストグラムで示しているものもあります)
DMMFXアプリでのMACDの表示手順
2本の線の中で、より早い動きをしているラインをMACD、もう一方のより動きの遅いラインをシグナルと呼びます。
MACDの初歩的な使い方は、MACDがシグナルを下から上抜いた時(ゴールデンクロスと呼びます)に買いポジションを作り、MACDがシグナルを上から下に割り込んだ時(デッドクロスと呼びます)に売りポジションを作るというものです。
ゴールデンクロスは買いポジションを入れるサインとして使える
デッドクロスは売りポジションを入れるサインとして使える
他にもMACDがゼロラインを上抜いたら買いポジション、割り込んだら売りポジションという使い方もできます。
ゴールデンクロス後に値上がり、デッドクロス後に値下がりが確認できる
いずれの場合も、反対の売買サインが出るまでポジションを継続するやり方もありますが、他にも上昇していたシグナルが横ばいになったら買いポジションを手仕舞う、下落していたシグナルが横ばいになったら売りポジションを手仕舞う、といった使い方もできます。
この取引手法のメリットは、サインが明確で売買がわかりやすい、比較的勝率が高いことなどです。
一方デメリットとしては、移動平均系のテクニカル指標全般に言えることですが、相場がもみ合いとなった場合に、後手後手に回って損失が続く可能性があることです。
ブレイク・アウト・ルールと同様に、チャートの長さ(足)を変えることで、短期取引から長期取引まで利用できます。
実際の取引までの手順
口座の開設が終わったら、まずはデモ取引の画面を使って売り買いのやり方、注文の出し方、口座状況の確認などを確かめたうえで練習しましょう。
また、DMM FXには取引についての解説マンガや、アプリや取引ツールの利用マニュアルが用意されているので取引を始めるまでの間に読んでおくと良いでしょう。
取引までに読みたいDMMFX関連コンテンツ
今後取引の指針となるチャート画面の使い方をよく確かめて、ラインの引き方を覚えましょう。
そして、どんなテクニカル指標を使えば良いかわからないと思いますので、いろいろな指標の特徴をつかむためにも、代表的な指標、移動平均線・MACD・RSI・ボリンジャーバンド・一目均衡表など興味のあるものをいろいろ見てみましょう。その中で気に入ったもの、興味を引くものがあれば、ネットや本などを見て、その指標がどんな指標で、どうやって見るのか、を学習しておくことが取引で利益を出す近道になります。
それと平行して、資金管理の方法も確認して下さい。基本的には、一つの取引で資金の5~10%程度以上の損失を被らないようにすることが大切です。
そのためにストップ・ロス注文を使ったり、ポジションを大きくしすぎないことに注意したりすることが大切です。
さきほど紹介したブレイク・アウト・ルールなどのように勝率が低いことが予想される場合には、一つの取引で被る損失はさらに限定した方がいいでしょう。
投資家の皆様へのメッセージ
FX取引は、世界的に見ても大規模で、洗練された金融市場である外国為替市場での取引です。為替相場には、世の中で起きていることすべて、経済情勢・政治情勢・天候・民族問題まで影響します。
FX取引を行うことで、そうした世界の出来事がもっと身近なものに感じることができるようになるはずです。
単に資産を増やすだけでなく、皆さんの視野を広げてくれる魅力ある世界がそこには待っています。最初は小さなポジションで始めて、慣れてきたら徐々にポジションを大きくしていってください。
皆様のFX生活が実り多いものになるお手伝いができたら幸いです。
この記事の執筆者
元大手外銀ドル円ボードディーラー
高野由美子
TAKANO YUMIKO
私はチェース・マンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース銀行)などで、約20年間ドル円のインターバンク・ディーラー(銀行間取引)をやっていました。
その後大手商社で自己勘定取引担当を経験したあと、現在は自分の経験をもとに個人投資家の方々を応援する活動を行っています。